過去ログ - ネミッサ「いつかアンタを泣かす」 ほむら「そう、期待しているわ」
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◆sIpUwZaNZQ
[saga]
2013/01/05(土) 16:07:23.01 ID:wOPwqajX0
高い、澄んだ音とともに、グリーフ・シードが落下する。今度こそ崩壊する魔女を確認すると、二人はネミッサに駆け寄る。おろおろするまどかとさやか。ほむらはネミッサの意識を確認すべく声をかけ、マミも血止めにリボンを再び作る。
「ネミッサ! 聞こえているなら返事なさい!」
血の気を失いつつあったネミッサは、うるさそうに声を出す。
「聞こえてるわよ。今、自分でも治してるから……、心配させてゴメン」
リボン越しに傷口に手を添えている。添えた手から魔法を送り込み治療をしているようだった。憎まれ口がまじるもののその声に力がない。出血で集中できていないのか、治療の魔法が弱々しい。マミはネミッサが魔法を使うことに驚くものの、すぐに切り替える。見事と言えた。
「治療はマミが代わるわ。貴女は気を落ち着かせて頂戴」
マミがほむらを見る。ほむらは疑問を察し、首を小さくふる。
「私は固有魔法に特化しすぎている。治療は苦手なのよ」
自らの無力を告白するのは辛い。だが、ほむらにはそれを飲み干してでもネミッサを助けたかった。それはマミに伝わった。マミは力強く頷くとリボン越しに傷口に触れる。傷口を抑えていたネミッサの血まみれの手は、ほむらが握りしめる。
ネミッサは、手を握るほむらに安心したのか、体から緊張が解ける。すっと目を閉じて治療に身を任せる。治療を代わったマミが今度はリボン越しに魔法を送り込む。
どこにいたのかQBが、先ほどの魔女が落としたグリーフ・シードを持ってきた。マミもほむらもそれをすっかり忘れていたのだが、QBが気を利かせてくれたようだ。
「マミ、治療するならこれを使うといい」
「いえ、これは暁美さんに」
小さく驚くほむら。マミとしてはお詫びの意味があったのだろう。だが、ほむらはそれを辞退した。ほむらは治療が得意ではない。マミに魔力を使わせている以上、受け取るわけにはいかないと言ったのである。今度はマミとさやかが驚く。二人はほむらを誤解していることに気づいた。だから、マミもほむらの意思を尊重し譲歩案を出す。
「それなら、二人で使いましょう。先に私、そのあと暁美さんね」
「……それなら、いいわ」
「私、暁美さんを誤解していたようね。グリーフ・シードを狙うなら、狩場を狙うなら、魔女に背を向けてまであんなことはしないものね」
予期せず、ほむらを試す形になってしまったことと、拘束してしまったことがマミに罪悪感をもたせていた。それ故、グリーフ・シードは譲るつもりだった。さらにそれを固辞したことが、マミには驚きであり、ダメ押しとなった。
「わ、私も、ごめん! 転校生のこと……すっごい疑ってた。マミさん狙ってるのかって思ってた」
「ほむらちゃん、ごめんなさい」
「いいのよ。私は気にしていないわ」
「ばか、アンタの言い方が悪いんでしょ、誤解させてさ。アンタこそ謝んなさい」
「い、いいから貴女は黙ってなさい。怪我が治らないわよ」
「もう、大丈夫なんだよね、ネミッサは」
頷くマミに、さやかの表情が和らぐ。まどかは腰が抜けたように膝から折れてしゃがみこむ
「よかった……よかったよう……」
「マドカちゃん、心配かけてごめんね。サヤカちゃん、怪我、ないよね?
「バカァ! 自分の心配しなさいよっっ! さやかちゃんは怒っているのですよ!!」
バシバシと、怪我に関係無さそうなネミッサの太ももを叩く。平手打ちのいい音が響く。傷には影響がなくてもきっとパンツの下は真っ赤だろう。それくらいはネミッサは甘んじるつもりだったが、結構痛い。
「それより皆、そろそろ移動しないかい? 結界が解けたのだし、周囲が騒がしくなる前にここを離れないと面倒な事になる」
「それなら、私の部屋にいきましょう。もうネミッサを動かしても大丈夫だろうし」
マミがネミッサを抱き起こして抱える。所謂お姫様抱っこというやつだ。恥ずかしさのあまり抗議しようとするも血液を失い、その体力がない。大人しく抱かされながらマミの部屋に連れて行かれる羽目になった。真っ赤に染まった魔法少女の衣装のままにっこり微笑むマミは鬼子母神さながらの強さと穏やかさを兼ね備えていた。
マミの死神はネミッサに取り付き、大人しく立ち去った。
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