過去ログ - ネミッサ「いつかアンタを泣かす」 ほむら「そう、期待しているわ」
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◆sIpUwZaNZQ
[saga]
2013/01/05(土) 16:11:08.42 ID:wOPwqajX0
「ベテランのマミですら危機に陥って、あのようなショックを受けることがある。それが魔法少女の実情」
道すがら、ほむらはまどかとさやかに言う。魔法少女にならないでほしいこと、それを約束してほしいことを。
「危険なことは私に任せてほしいの。ならないって約束してもらえるかしら」
「うん、私約束するよ。魔法少女には憧れてたけど……あんなことあって。怖いもん」
「そう、それがいいわ。貴女はどう?」
「わ、私も怖い……。生まれて初めてあんないっぱいの血をみた……」
すっかりネミッサの大けがで二人は怯えていた。
「でも、戦えるのがほむらだけになるんでしょ。大丈夫なの?」
「問題ないわ」
髪をかき上げる仕草をする。それは自信に満ちていた。最後までさやかはしないと約束する言葉を言わなかった。
打って変わって静かになるマミの部屋。残った食器を片付けながらマミはニコニコしている。もう落ち込んだ二人はいないのにもかかわらずだ。ネミッサはなんとなく思いつき、マミに声をかける。
「マミちゃん?」
「さぁ、ネミッサ、夕食作るわね。やっぱりおかゆがいい? それとも、なにかリクエスト有るかしら?」
「あのう……マミちゃん?」
「うどんとか、消化のいいものなら、なんでもいいわよ。挑戦しちゃう」
「マミちゃん!」
ネミッサの大きめの声で、動画の停止ボタンのようにマミの動きが止まる。手招きをすると意外なほどあっさりと、そして静かに近寄る。ちょこん、とネミッサの枕元に座り込む。笑顔は絶やさぬまま。今にも「なあに?」と言い出しそうな純粋な笑顔。ネミッサにはわかった。先輩の威厳で辛うじて保っていた体面と微笑み。
「もういいのよ? ムリしないで。カラ元気のほうが心配になるよ」
ふわふわのマミの髪。硬質の髪のネミッサにとっては撫でるだけで落ち着くような気分になる。さらさら、さらさらと指に髪が落ちる。その間、マミは微笑みのまま、何も喋らない。喋れない。自分でも恐らく気づいていないのであろうが、笑顔の双眸からは音もなく涙があふれこぼれ落ちる。次いでようやく自分の心に気づいたのか表情が崩れる。歯を食いしばってこらえていたが、もはや嗚咽は止められない。
「うっ、うううう、うぅ〜〜……ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
無事な左手で、号泣するマミを抱きかかえる。緊張が解けたのか全身が恐怖で震えているのがわかる。メンタルの弱さを責めるなかれ。一度瀕死の事故にあったマミは、死への恐怖にアナフィラキシーショックのように過剰反応してしまう。故にQBへの攻撃も恐怖していたし、その攻撃を行ったほむらに敵意と警戒心をむき出しにしていた。ほむらには残念ながらその当たりの察しが足りなかったため、マミの警戒の度を強めてしまっていた。
「怖かったよね、二度も死にかけたんだもん。ごめんね、ちゃんと守ってあげたかったのにさ」
抱きしめられながら、頭を横にふるマミ。ネミッサの誤解からくる労りはマミの心を打つ。だが実際にマミにとっての最大の恐怖はネミッサだった。ネミッサを失う恐怖。それは心の理解者と友人を失うことだった。自分に忍び寄る死も怖くないわけはないのだが、それ以上にネミッサを失うことが怖い。それを取り繕うように明るく振舞った。結果、さやかやまどかは元気を取り戻し、ほむらの警戒心も和らいだ。
「違います……ネミッサが、ネミッサを失うのが……、怖くて……。大事なお友達が、死んじゃうのかと思ったの……、守れなくて、ごめんなさい……うええええええええん……」
じわり、ネミッサも釣られて涙が浮かぶ。照れくささと嬉しさ、マミの優しさが沁みた。
今度こそ、助けられてよかった。二人とも抱き合い、暫く涙に暮れていた。
ひとしきり泣き続けただろうか。ほむらからの抗議のメールがネミッサの携帯に届く。その着信音で二人我に返る。自分達の姿勢に照れ笑いで誤魔化した。内容は、ほむらの部屋に放置した火器全般の処理について。その中写真も添付されていた。
「な、なにこれ? 可愛いわね」
鉄のヘルメットにウサギの耳がついた、冗談みたいな防具。これも立派な魔晶化された防具なのだが外見に著しい問題があり、正直ネミッサも処理に困っているものだ。特に気にせずネミッサはメールで返信した。
『変身して被れ。ついでにブラもつけてみて。今度携帯で撮るからよろしく』
「暁美さんが怒りそうね」
「マミちゃんに行く矛先がこっちくるならへーき」
まさか怪我人にあれこれ攻撃はできまい。候補生を巻き込んだマミに対する敵愾心がネミッサに向いてことが収まるのならば願ったりだ。マミはまじまじとネミッサに送られた画像を見つめている。何事かとネミッサが尋ねると、一言こう答えた。
「私も着てみたいなぁ」
ほむらが聞いたら喜んでマミの部屋にジャマな防具を持ってくるだろう。そしてそれを嬉々として身に付けるマミが頭をよぎり苦笑する。案外似合うかもしれない。
「うさみみマミちゃんね」
「ふふ、そうね」
ぴょこぴょこうさみみをなびかせながらもティロ・フィナーレを撃つマミが想像できた。意外にかわいい。
「アタシも一緒にかぶろうかな。お揃いで」
「楽しそうね」
やっと、マミに自然な笑みが溢れる。
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