3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/18(金) 19:24:32.50 ID:16wrmhbw0
――よ、いらっしゃい。
そう言って、こいつを迎えたのが今日の午後三時くらいの事だ。
何処かに遊びに行ってもよかったんだけど、昨日のこいつの声色は結構真剣に聞こえた。
特に重大な問題を抱えてるわけじゃないにしても、何か私に話したい事があるのだけは間違いない。
だから、私は実家でこいつと会う事に決めたんだよな。
久し振り――って程でもないけど、
ちょっと見てなかったこいつの顔を見るのは正直嬉しかった。
私の気のせいじゃなければ、こいつもかなり嬉しそうな顔をしていたはずだ。
私の部屋で切り出されたこいつの話自体は簡単な話題だった。
今年度の一年はどう過ごしたか、来年度からはどういう一年にしたいか。
大体がそういう話題だったし、私の考えてた通り深刻な問題は無いみたいだった。
ただ――、こいつの会話に掛ける情熱が並大抵じゃなかったんだよな。
かなりお喋り好きな自覚がある私が違う話題を切り出せないくらい、
こいつはたくさんの事を話して、たくさんの事を私に訊ねたがってた。
いくら話しても話し足りないって様子で、一番熱が入った時なんか、
私達のおでこ同士がぶつかりそうなくらいにじり寄っても来た。
それどころか、下手すりゃ唇も重なってたかもな……。
とにかく、それくらいこいつは私とたくさんの会話をしたがった。
私はそれが嬉しかった。
私だって話好きなんだもんな。
自分から話題を切り出せないのはともかく、どんな話題でもこいつと話せるのは楽しくて嬉しい。
だから、私はこいつに負けじと色んな話をしてやったんだ。
今年一年、私かどんな事を感じたのか話したかったし、
こいつがどんな事を考えながら一年を過ごしていたのか、知りたかったからさ。
ちょっと話し疲れを感じ始めた頃だったかな?
何となく時計を見てみると、いつの間にか六時を回っていた。
窓の外の空模様もかなり暗くなってしまっている。
三月も中旬になって陽が長くなって来たとは言っても、まだまだ陽は短い。
そろそろ帰って来るはずの父さんに車を出してもらって、こいつを家まで送ろうか――。
そう思ってこいつの方に視線を戻した時だった。
こいつが私の方に全身から抱き着いて来たのは。
その瞬間、私の胸が強く高鳴った。
まさか私と離れたくないから抱き着いて来たのか、ってそう思った。
それくらい自分がこいつに好かれてるって考える事は、照れ臭いけど嬉しくもあった。
まあ、そんな事があるはずもなかったのには、すぐに聞こえたこいつの寝息で気付けたんだけどな。
つまり、こいつは単に話し疲れて、私の方向に倒れ込んで来ただけって話だ。
――ですよねー……。
呟きながら、私は寄り掛かって来るこいつの体重を支えた。
分かっちゃいたけど、ちょっと残念だったのは内緒だ。
それはともかくとして、久々に感じたこいつの体重はかなりずっしりと感じた。
別にこいつが太ったってわけじゃない。
こいつの全身に力が入ってない――、つまり、完全に爆睡してるって証拠だ。
寄り掛かられてる体勢のままじゃ、この重さは私だって辛い。
それでどうにかこいつと私の体勢を、
お互いにとって楽な状態に変えようとした結果、
今の私がこいつを膝枕してるっていう体勢になってしまったわけだ。
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