過去ログ - かずみ「from Connect to Luminous」
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/26(土) 22:33:32.45 ID:rV1mNpfso

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  遡ること、およそ十時間。
かずみは質素ながらも落ち着いた雰囲気のあるカフェに居た。
飾り気の無い椅子に腰を下ろし、同じく飾り気の無い頑丈なテーブルに置かれた物に目を落としている。

  ロシア料理の一つである、ビーフストロガノフだ。サワークリームがきれいに掛けられている。
その香りたるや、まさに絶品。それどころか空きっ腹のかずみにとってはもはや毒に等しい。

  かずみは視線をそのままにして向かいの席に座る男性に尋ねた。

「食べていいの?」

「……」

  無言で頷く男性。
それを視界の隅で確認したかずみは、まるで檻から放たれた猟犬のような勢いでスプーンに手を伸ばした。
そして料理に突き入れ、掬い、口に運んで、咀嚼する。
とろとろに煮込まれたビーフストロガノフのコクのある味が口内に広がっていく。
えも言えぬ幸福を率直に表現するならば、

「わっおいし! 超ウマ、ていうかウマーイ!」

「……静かに食べろ」

「ごめんなさっ――ウマっ! ほんとおいしいどうしようこれやだもー!」

「……」

  こめかみを押さえる男性を前に、かずみは思う。
万民が唸る芸術品を前にして感動を覚えた人間が感嘆の声を上げるのは極々自然なことだ。
ならばその芸術品と同等の域に達した料理を食した人間がその感想を逐一声に出してしまうのも、


  きっと、自然なことのはず?



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