過去ログ - 【咲安価】久「麻雀とかを?」京太郎「ええ、教えてください」 七局目【解説?】
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15: ◆B6xkwd67zxGJ[saga]
2013/01/24(木) 23:41:23.11 ID:SxPvnw2vo

 普段偉そうにしていた奴が。

 調子に乗って傲慢に振舞っていた男が。

 自分の下で泣き叫びながら、弱弱しく抵抗をする。

 鼻血を吹き出して。涙を流して。涎を垂らして。

 『このまま失明させてやろうか』、『二度と人前に出られない顔にしてやろうか』と言えば――ごめんなさいとか、許して下さいとか、やめてくださいとか。

 唾を飛ばして。無様に懇願して。失禁して。そういう醜態を曝す。

 その事に、気が晴れた――喜びを覚えたのは確かだ。すっきりしたのだ、色々と。


 部活から見るなら、とんだスキャンダルだ。大きな損失だ。

 男子部員一名が暴力行為の末に退学。もうの有望な選手は精神的なショックで退部。

 明らかな迷惑を掛けてしまった。しばらくはマスコミなども煩かっただろう。

 それでも――京太郎としては、彼を再起不能にした、その事自体に対しては後悔はない。

 アイツはやられて当然だった。アイツに対して負い目はない。どんな人生を送ろうが、どう惨めになろうが知った事ではない。

 そう思ってしまうあたり――やはり本質的に自分は、こちら側に寄っているのだろう。


「ま、そんな訳なんで――心配しないでくださいよ。俺は、楽しくやれてますから」

「……分かってたのか?」

「お嬢、面倒見がいいって子供たちに大人気じゃないですか。俺の事、心配してくれてたんですよね? だから頻繁に顔を出してくれた」


 そろそろいいだろうかと、鯖を再び過熱する。

 ついでに豆腐を小鉢に乗せて、だし――山形の風土料理でスーパー簡単に手に入る――を上からかける。

 漬物をもっと細かく刻んだようなさわやかな味わい。

 食感もよく、直接ご飯にかけてもいいし、こうして豆腐にかけるのも良い。納豆なんかにも合うと、個人的には思っている。

 出来上がった料理をお盆に乗せて、智葉の前に。それから、自分の前に。

 コンロや流しの割に、テーブルが狭いのが難点だ。

 元々あまり、他人を家に招いて食事を振舞う事を考えていないのだから、それも必然であろう。

 だからと言って、人と飯を食べるのが嫌いという訳ではない。

 むしろ、好きだ。元々、人と接する事が好きなのだ。この職業になる前は、接客業が多かった。

 だから――。

 胃が痛いというのは確かにあるが、こうして顔を出してくれる智葉に感謝している部分もある。

 時々、あの後彼女たちはどうなったのだろうか。元気にしているのだろうか。

 それまでの麻雀部の事を思い出して、無性に人が恋しくなることがあるのだから。


「……それだけじゃないんだけどな」

「ん? なんか言いました?」

「……いや」


 ――なんでもない、と。

 そう言って微笑む彼女の表情に、箸が少しだけ止まってしまったのは、内緒だ。

                                                    ――了





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