過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：八巻目【都市伝説】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：八巻目【都市伝説】

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884:1[saga]
2013/02/11(月) 22:04:18.43 ID:V1GJAAgQo
後輩「塾帰りの私が、バスの外をふと見たら貴方が河で流れてまして」

後輩「気紛れに降りて見物に行ったんですが、私では引き上げられそうになかったので」

後輩「そうしたら偶然、そこの不良の人達が通りかかりまして」

後輩「事情を知った途端、ドッパーンと二人で冬前の河に飛び込んでったんですよ。微妙に汚くて寒いのに」

後輩「そしてずぶ濡れの三人が上がってくる頃に、タイミングよくそこの会社員の人が通りかかって」

後輩「ホッカイロやらタオルやらで、結構冷えてた貴方の体を暖めてくれたようです」

後輩「そこに通りかかった車の中から出てきたのが、そこのOLさん」

後輩「彼女の車で私の家まで運んで、まあ経緯はそんな感じです。流石に不良さん達にはシャワー浴びて貰いましたけど」

後輩「皆さん平日一日潰して、貴方の看病してくれてたんですよ？」

偶然通りかかった人達が、力を合わせて彼を助けた。
それは奇跡でも、偶然でも、ご都合主義でもない。

それだけの人を彼が助け、それだけの人達に彼が手を伸ばしてきたという事。

ゆえに、この救済は必然だ。

ふと、彼の脳裏に義姉の言葉が蘇る。

いつかの日、いつかの出会い。
その前に、大切な事を見失っていた自分にかけられた言葉。

「目に見えるものだけが、全てじゃないよ」

「貴方は沢山の人と繋がってきた。その繋がりは、これからも増えていくんだよ」

「それを信じて。そして、それを決して忘れないで」

自分には、見えていなかった。
これが、見えていなかった。

……そして、自分は。

見えていないものがあったから、失敗したのではなかったか。

見えていなかったから、『彼女』を泣かせてしまったのではなかったか。

……存外、思っていたより自分には見えていないものが多そうだ。

京太郎「……礼を言うのは、こっちの方ですよ」

そして彼は、気付かない。
たった今、彼の力の方向性は確定した。

彼の成長に、『腕輪』は応える。

京太郎「ありがとう。俺はまだ、立ち上がれそうです」

そして誰にも気付かれぬまま……彼の右手首に巻かれた腕輪の文字が、変化した。

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