過去ログ - 番外個体「笑顔に会いたい」
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23:2[saga sage]
2013/03/18(月) 20:14:22.10 ID:jlq0P1830
2



十数年ばかりの経験論で語られる若造の主張は、実のところ、本人が思っているより薄っぺらかったりするのだ。

その程度のくそったれの人生だと決めつけた盲信的な価値観は、血達磨を積み上げる日々から誰かに魂ごと救いあげられた時に意図も簡単に崩れ去った。
絶対に崩壊しないと確信していたアイデンティティーは今や見る影もない。

いつからか、少年は。
もう、己の人生をくそったれだ、と吐き捨てることを止めていた。

だから、少年―― 一方通行 ――は、経験論で何かを抽出し外部に発することに、少しばかり消極的になった節があるかもしれない。
不必要に言葉を漏らす脆弱さが身を潜めたと褒めるか、感情表現が下手くそな彼の本音が更に分かりにくくなったと愚痴を言うかは人による。

彼自身は知らぬことだが、
身近にいる被保護者の女の子はにやりと笑いながら

「トゲトゲの心の先端が、ちょこ〜〜〜〜〜〜っっっっとだけ、まるくなったの」

と、言ったとか言わなかったとか。


 


「くっそ、ダリィな……」

二限目の授業は道徳だった。
長点上機学園の二学年用のとある教室で、白髪頭が人目を引く細身の少年が教師に悟られないよう欠伸を噛み殺しながら小声でぼやいた。
太陽が昇るにつれ、南向きに設置されている教室の窓は温かな春の日光を透していく。
あァ、厄介な席を引き当てちまった、と睡眠の誘惑に負けそうになる瞼と格闘しながら心中でこぼした。

今朝のHRで行われた『新学期恒例行事☆くじ引きによる席決め』争いで見事に超特大特等席を引き当てた一歩通行は、
のんびりな口調で当たり障りのない感動話に隠された人間の情とやらを説明する男性教員の話を、
窓側の最後列の席で肩肘をたてただらしのない姿勢で、右から左へと受け流す作業に没頭する。

同年代の他校に居る知り合い達が涙を流して欲しがる超特大特等席は、一歩通行にとっては無価値に等しいようだ。
もし、この場に上条当麻や土御門元春ら(一方通行の知り合いではないが、青髪ピアスと呼ばれる高校生を含む)が居たならば、
「なんとぜーたくな! 超特等席という激戦区を制した喜びはないのか!? かくも素晴らしい座席を勝ち取った喜びはないのかねぇぇぇええええーーー!!!??」
などど騒ぐこと必須なのだが―――。

幸か不幸か。
彼らは第七学区のとある学校に通う男子生徒で、一方通行は学園都市屈指のエリート校長天上機学園に通う男子生徒。

いい年をした男どもが己らの学校で不毛な争いを繰りひろげていたのに反し、
エリート校とはいえ表だって超能力者にチャレンジする強者は一人として現れず……、
満場一致で超特大特等席こと窓側最後列の席は一歩通行のものと相成りました、まる。

さて、クラス連中の羨望がつまった教室の聖域(座席)が少年にとって、厄介な席へと成り下がるという悲劇が何故にして起きたのか。

理由は単純明快。

突き刺さってくる紫外線の量が半端ないのである。


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