4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/06(水) 22:59:41.66 ID:lqWbdXMg0
なんとなく「自分が守られる存在なのだ」と言われているようで、つい頬が弛みそうになる。
寝起きの気だるさや苛立ちは何所へやら。
すっと、心の底から消えうせていく。
番外個体に、その自覚はまだない。
「子ども扱いしないでよね」
番外個体の頭をなでまくる黄泉川の手をペシッと軽く跳ねる。
照れ隠しか、と黄泉川は思わなくはなかったが、あえて指摘はしなかった。
―
いってくるじゃんよ、と黄泉川の出勤を“ついでに”見送った番外個体は、さっさと洗顔を済ませ、
寝まきから普段着である芳川からのお古であるピンクのアオザイに着替えると、リビングにあるソファーにどんと陣どり寝そべった。
普段は白髪の同居人の指定席なのだが、最近、真面目に学校に通い始めた少年はすでに家を出ていた。
自堕落生活の主である芳川はどうせ自室で睡眠を貪っているだろうし、
目覚めてから一切姿を見せないちびっこは、近所に住む同年代の子供たちと遊びにでも出かけているのだろう。
テーブルの上のチャンネルでテレビの番組を変えながら、
「――うわー。静かなのって、落ちるかねぇー……」
と、彼女らしからぬ独り言が口から漏れた。
賑わいこそが黄泉川宅の日常であり、賑やかさが喪失された空間はやけにちっぽけに感じられた。
テレビから流れてくる音がなければ、すぐにでも空虚を思い出させる部屋を飛び出していただろう。
1人が好きだったはずなのに、1人が嫌いになったのはいつの事だったか。
極寒のロシア、殺害対象だった男が差し出した細うでを握り返したのが始まりだっただろうか。
腹は空かない。
胃に入れたってどうせ吐くだけだ。
静寂が支配する室内で、忘れかけていた感情が眠気とともに湧き上がる。
「……やべーなぁ。超アタマ痛い」
だから、朝は苦手だ――。番外個体は今日も今日とて、思うことは常にソレだった。
「やっぱ苦情入れに行ってやろーか」
問題解決の糸口すらつかめやしだいだろうけど。
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