10: ◆epXa6dsSto
2013/02/09(土) 19:25:18.49 ID:juBpRnU+0
まあ、秘密基地――って言っても、特に基地を作ってたわけじゃないけどな。
子供の足には辿り着くのが難しい小高い所だったから、勝手にそう呼んでただけだ。
でも、私達と同じく、この場所を秘密基地にしてる子供達は多いみたいだった。
ちょっと見回してみただけで、そこら中にボールやBB弾なんかが転がってる。
きっと私達みたいに秘密基地で遊び回ってるんだろう。
あ、エッチな本も発見。
澪に見せると顔を真っ赤にするだろうから、これは黙っておこう。
「ふふっ……」
急に澪が笑い声を出したけど、私は何も訊ねなかった。
何かを思い出してるんだろうけど、今はそれを訊かなくてもいいかって思えたんだ。
私達は二人で居るとよく喋る方だけど、たまにこうして無言になる。
別に話す話題が無くなったわけじゃない。
澪と話す話題が無くなる事なんて、一生無いと思う。
でも、私達はたまに何も話さなくなる時間がある。
それは今みたいに昔を懐かしんでいる時だったり、
外の空気を感じたくなった時だったり、今は言葉が必要無いって思えた時だったりする。
私らしくないちょっと気障な言い種だけど、でも、本当にたまにそう思うんだよな。
澪がただそこに居てくれる事が嬉しいなあ――、ってさ。
静かな時間が過ぎる。
二人して無言だけど楽しくて気持ちのいい時間が流れる。
何となく空を見上げると、夕陽は完全に落ちてしまって星が輝き始めていた。
完全な夜の時間の始まりだ。
でも、私は怖くない。
澪も夜を怖がってない。
私が傍に居るから――、ってわけじゃない。
空に大きな月が輝いていて、私達を照らしてくれていたからだ。
勿論、太陽ほどじゃないけど、見ていてちょっとだけ眩しいくらいだ。
「でっけー月……」
気が付けば私の方から無言の時間を壊してしまっていたけど、
澪は私を睨んだり、不満そうな雰囲気を見せたりはしなかった。
無言の時間を過ごすきっかけが気まぐれみたいに、
私達にとってはまた喋り出すきっかけも気まぐれで自然なんだ。
それが私達の関係なんだ。
ただ、澪は少しだけ呆れた視線を私に向けていた。
「月の大きさが変わるわけないだろ、律……」
「いやいや、マジででっかいんだって。
よく見てみろってば」
「そんなわけ……、あれ? ある……。
おかしいな……、満月だからかな?
律の言う通り、何だか今日の月は大きい気がするな……」
「だろー?」
私がニヤリと笑ってみせると、澪がちょっと悔しそうに俯いた。
だけど、大きな月が気になったのか、すぐにまた視線を月に向けた。
私も澪の視線を辿って月に視線を向ける。
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