7:7[sage]
2013/02/11(月) 15:07:21.69 ID:FyZPuZNm0
「さて、どこに行こうか?」
京太郎は問う。
「さあ? っていうか、どこに行くか決めてなかったんすか?」
攻めるような視線を逸らしつつも、しかし、
「悪い」
素直に謝る。確かに、甲斐性としてはここは男性が動くプランを立てておくべきだった。
困った様子を見られたらしく、ほんの少しだけ笑顔を見せた東横は悪戯っぽく、
「うそっすよ」
笑って見せた。
不覚にもその笑顔は可愛い。
〇
「いやいや、面白いことになってますなー」
女の姿が見える。二人の影だ。
一人はどこか猫を髣髴とさせるトリックスター然とした女。一人は理知的に見える清廉とした女。
二つの影が追うのは一つの目標だった。
情報は理知的に見える女――加治木・ゆみからもたらされた。
東横・桃子の所属する部活の副部長、加治木が二日ほど前に携帯の前で挙動不審な後輩を見たことが原因だ。
最初は容貌が見えなかったが、だんだんと崩されていく断片的な情報が拾い集められ、
・東横・桃子が男とであった。
・その男は清澄高校の男である。
・休日にデートする。
こういったことである。
「――情報を渡したのは正解だったのだろうか?」
加治木は頭を抱える。
興味があったのは事実だ。入れ込んでいる後輩が幸福を感受している姿は悪くない。
特にその後輩の桃子は自分に依存している節があった。
哲学的に言うのならば、永遠は存在しない。時に季節があるように、人も時を刻んで換わっていく。
だから、
――これで、モモも変わることができればいいんだが。
分かれはある。必ずだ。望むも望まぬもかかわらず。
だから、後輩が良く変わっていくのを見届けたいと思う気持ちはある。
しかし、罪悪感はあった。
「なあ、今からでも遅くはない。尾行などやめたほうが――」
ふう、とトリックスター然とした女――、竹井・久は分かっていないな、そんな笑みを浮かべて、
「あのねえ、ここまできたら引くことなんてできるのかしら?」
う、と加治木は唸る。興味がなければここには居ない。
「だが」
「あ、ほら、行っちゃうわよ? 行きましょう」
進むことを前提としているかのように動く竹井に加治木は頭を抱え、
――妙なことにならなければ良いが……。
自身が原因であることを忘れ、そう思ってしまう。
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