117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/17(日) 00:25:40.67 ID:bWGm8aPso
やがて意識が覚醒した。フラッシュバックのときのような大袈裟な発汗や頭痛などは感
じない。そして奈緒は戸惑いながらも僕を冷静に見ているだけのようだ。明日香が自分を
見失ったときの僕を抱きしめてくれたような素振りはない。
「大丈夫?」
「うん。何とか」
「最初からあまり驚かないで。これじゃ最後まで話せないじゃない」
「大丈夫だよ。ちょっと慌てただけだ」
僕は気を取り直した。奈緒の言葉にどんなにショックを受けたとしても、今では明日香
がいてくれる。
「あたしにとってはね、奈緒人さんは始めて本気で好きになった人だったの。だから告白
してOKをもらって付き合うことになったときは本当に嬉しかったな」
「それは・・・・・」
「そう。だから有頂天になった瞬間、お兄ちゃんの名前を聞いたときあたしは凄くショッ
クだった。地の底に突き落とされたようだった」
「さっきの話、あたしが彼氏がお兄ちゃんだと知って悩んだ話ね、嘘じゃないの。お兄ち
ゃんと同じくらいにあたしはショックを受けて悩んだ。ただお兄ちゃんと違うのは、お兄
ちゃんより大分早く、というか付き合ってもらえたその直後からあたしは間違っていたこ
とに気がついた。お兄ちゃんがあたしのことを付き合い出したばかりの彼女だと思ってく
れていたとき、もうあたしは出来立ての自分の彼氏が付き合ってはいけない自分のお兄ち
ゃんだってわかっていた」
「兄貴だって気がついていたのなら、何でそのまま付き合うような真似を・・・・・・・」
これは本当にきつかった。初めてのキス。初めての嫉妬。初めての諍い。
それは僕は初めてできた彼女との大切な思い出だった。奈緒が実の妹だって理解した後
でさえ、未練がましい自分に自己嫌悪に陥りながらも大切にしていた記憶なのだ。
「そうね」
奈緒が僕から視線を外した。
「ごめん」
「何がごめんなの」
「だから・・・・・・。あのときあたしがやめておけばお兄ちゃんだってあんなに苦しくならな
かったのにね」
「どういう意味だよ」
「一応考えたんだ。お兄ちゃんに自分が妹だって言おうかって。あたし・・・・・・何で黙って
いようなんて、このまま黙っていればお兄ちゃんの彼女になれるかもなんて考えちゃった
のかな」
「本当にさっきから意味わかんないよ」
「・・・・・・」
「告白後にしたって僕のことが兄貴だって気がついたんでしょ」
「うん」
「じゃあ、何でそのまま付き合う振り、つうか僕の彼女でいるような振りをしたんだよ。
今さら言い難かったのか?」
「ううん。あのときは、嬉しいけどつらくて。つらいけど再会できたのは嬉しくて。それ
で、自分の中でもよくわかんなくなちゃって。でも落ち着いて考えてみたの。自分が今本
当にしたいことは何かって。そしたら簡単だった」
「簡単?」
「うん。考えてみたら、あたしは奈緒人さんと別れるのなんて絶対に嫌だったの。奈緒人
さんが自分のお兄ちゃんだったにしても。そして彼氏とじゃなくて本当のお兄ちゃんに再
会したい気持も嘘じゃなかった。しばらく悩んでたんだけど、あるときふっと簡単に結論
が出ちゃった」
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