146:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/25(月) 00:04:00.82 ID:4Y9bOK7Ho
「僕たちのせいじゃないみたいだけど」
「うん。博之、大丈夫かな」
「・・・・・・わからない」
たんかを車内に収容し終わった救急隊員たちが救急車に乗り込んだ。その出発にようや
く間に合ったパトカーから一人の警官が降りて救急車の運転席に顔を突っ込んだ。
すぐに話がまとまったらしく赤色等を点滅させて駅前から出て行く救急車の後ろを、一
台のパトカーがサイレンを鳴らして付いていった。やがて二台のサイレンの音が遠ざかり
聞こえなくなった。
その場に残ったもう一台のパトカーから制服の警官が何人か降りてきた。その後ろから
私服の男がパトカーから降りてあたりを見回した。制服の警官たちが事件の現場から人を
排除してよくドラマで見るような立ち入り禁止のテープを設置している。同時に別な警官
が群集に目撃者はいないか呼びかけた。
「どうする?」
僕は明日香に聞いた。
「わかんないよ。でも、あたしたち現場を目撃したわけじゃないし」
確かにそうだが、事件を目撃した人たちと違って僕たちは被害者の素性を知っている。
どうせすぐに警察にもわかるのだろうけど、それくらいは市民の義務として通報しておく
べきかもしれない。
「おい、兄ちゃんじゃねえか」
僕は私服の警官から声をかけられた。近寄ってきた警官を見るとそれは平井さんだった。
「久し振りだな。って、お? 明日香ちゃんも一緒か」
「ご無沙汰しています」
挨拶する僕を明日香は不審そうな目で見た。それはそうだろう。明日香は直接的には平
井さんとは顔を合わせたことはない。病院に平井さんが来たときは意識を失っていたし、
後に事情聴取に来たのは平井さんではなくて女性警官さんだったから。
「明日香が怪我をさせられたときに病院に来てくれた刑事さん、平井さんだよ」
「明日香ちゃん今日は」
平井さんに言われて明日香は慌ててぺこりと頭を下げた。
「さて、つまんない仕事に取りかかるかな。兄ちゃんたちも早く家に帰れよ」
平井さんがのん気そうに言って僕たちから離れようとしたので、僕は慌てて彼を呼び止
めた。
「すいません、さっきの被害者の人を僕は知っているんですけど」
「・・・・・・何だって?」
平井さんののん気そうな顔が一変した。「・・・・・・話を聞こうか」
僕たちは平井さんに連れられてパトカーの後部座席に並んで座った。
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