過去ログ - ビッチ・2
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173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 22:26:45.97 ID:D0y2i/Rfo

 認めたくはないのだけど、あたしの荒く不安定な演奏がそれなりに教室やコンテストで
評価され出したのは、あたしが実質的にパパの愛人になってからだった。明確な因果関係
は自分でもよくわからないけど、単に旋律をなぞる以上の感情が演奏中のあたしにとりつ
いて、それは結果的にオーディエンスに届いて、ある種の感動を観客の心に呼び起こして
しまったみたいだった。

 あたし以上に安定した技術を持つ奈緒に足りないのはこの点だったから、あたしが奈緒
の愛人になれればその点も解消するのだと考えていた。

 でももっといい方法がある。

「へーえ、そうなの」

 あたしは冷静さを取り戻した風を装った。あたしのネゴシエーションのテクニックはほ
とんどパパから教わったものだったから、パパにそれが通用するかはわからない。

「でもパパが本当のことを言っているのだとしたら、奈緒に対して我慢することはないん
じゃないの」

「何だって」

 パパが初めて困惑した様子を見せた。

「あたしだって最初は痛かったし恐かったし、何で自分がこんな目に遭うのか理解できな
かった。でも何度も無理矢理抱かれているうちにそれが気持ちよくなったし、パパのこと
これまで以上に好きになったんだよ」

「有希にそう言ってもらえるとうれしいよ」

「だったら奈緒ちゃんだって同じじゃない?」

「何を言ってるんだ」

「もっと言えばパパが我慢しないで怜奈叔母さんを抱いていたら、今頃は叔母さんだって
無駄に死ぬことなく幸せにパパと暮らしていたかもよ」

 パパは黙り込んだ。パパが奈緒の話をしたのは何か目的があったからだ。パパの性格を
よく知っていたあたしは、そのことには疑いを抱かなかった。でも、パパにだって弱点は
ある。そして腹立たしいことにその弱点は娘のあたしではなく、パパの妹の怜奈叔母さん
とその忘れ形見の奈緒のようだ。

 パパの告白に始まった混乱や怒りをあたしは短時間の間に昇華した。皮肉なことにパパ
に教えられた方法で、あたしは冷静さを取り戻すことができたのだ。常に原因と結果の関
係を意識すること。相手の弱点だけを正確に点くこと。それがパパの教えだった。

 そんなパパにあたしごときが優位に立てるわけがないのだけど、怜奈叔母さんに関係し
たことに関しては、筋金入りのシスコンのパパはもいつものような冷静な判断ができない
かもしれないとあたしは考えた。

 パパの優位に立って奈緒への怒りを晴らす方法が一つだけあった。

「怜奈叔母さんのときの過ちを繰り返さないで、あたしを抱いたときみたいに素直になっ
た方がいいんじゃない?」
 あたしは微笑んでパパに言った。「奈緒ちゃんってすごく可愛いよね。写真の怜奈叔母
さんにそっくりだし。でもこのまま放っておくと奈緒ちゃんは奈緒人さんに盗られちゃう
よ。彼女、彼に夢中だし」

 パパが驚いたようにあたしを見た。これがパパの演技でなければ、あたしの勝ちかも知
れないのだ。


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