195:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/09(木) 23:30:49.57 ID:eJmhesKmo
「おまえさ、二人の女の子に好かれている自分のことを格好いいとか考えてるじゃねえだ
ろうな」
兄友が口を挟んだ。
「だからあんたは黙ってろって」
女さんが今度は僕の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「あたしさ。前に言ったじゃない。奈緒人君は奈緒ちゃんみたいな素直ないい子に好かれ
るんじゃないかと思ってたって」
「うん。そう言っていたね」
「背伸びしたくなることなんて誰にでもあると思う。人間なんだから可愛い女の子に好意
を示されたら、ふらふら揺れることもあるよ。でもさ、君には絶対奈緒ちゃんみたいな真
面目に君のことを好きな子の方が似合ってるって。今、明日香ちゃんみたいな女の子に流
されたら絶対後悔すると思う」
「どういう意味かわかならいんだけど」
明日香は真面目ではないとでも言いたいのか。かつて女さんは、僕の妹だと知らなかっ
た明日香のことをビッチ呼ばわりしたことがあった。その後彼女はそれを訂正して僕に謝
罪したのだけど、それは本心ではなかったのか。
「明日香が真面目な女の子じゃないって言いたいの?」
僕はかつて自分が本気で好きになったことがある女さんに向って言った。僕のことはい
い。でも明日香のことを貶めるのはたとえ女さんであっても看過できない。
「ちょっと待て。そういうことじゃねえよ。おまえは奈緒ちゃんに告白して付き合い出し
たんだろ? そのおまえが何で義理の妹とベタベタしてんだよ。はっきり言えば、それっ
て浮気じゃねえかよ」
兄友がまた口を出したけど、今度は女さんも彼を止めようとはしなかった。同じ考えだ
ったのだろう。
「昔からおまえとは仲が悪かった明日香ちゃんと仲直りするのはいいよ。でもよ、それが
何で恋人同士みたいにいちゃいちゃすることになるわけ? どうしても明日香ちゃんと付
き合いたいなら、せめてはっきりと奈緒ちゃんを振ってからにすべきだろうが。どっちに
もいい顔して、結果的に奈緒ちゃんを泣かせるなんて。最低じゃねえか、おまえ」
「やっぱりあんたは黙ってろ。奈緒人君を責めたって仕方ないでしょ」
恐い顔で女さんが口を挟んだ。「ちゃんと別れてからとかそういうことじゃない。奈緒
人君には奈緒ちゃんの方が似合っているって言うべきなのに」
責められれば責められるほど、僕の心の中では明日香に対する愛情、あいつを守りたい
という感情が湧き出してきた。確かに明日香は以前までは誰に責められても仕方のないこ
とをしでかしたのだけど、それでも僕がひどい状態だったときに僕を守ってくれたのだ。
僕は明日香と将来を誓った。こんな風に明日香のことをこいつらに悪く言われる必要はな
い。
「だいたい奈緒ちゃんはもう知ってるの? 奈緒人君が明日香ちゃんとそういう仲だっ
て」
奈緒が実の妹であることを話しさえすれば、あるいはふたりも納得するかもしれない。
でもそれは奈緒に断りなく勝手に他人に話していいことではない。今はせめて嘘だけは付
かないようにするしかない。きっと女さんも兄友も納得してはくれないだろうけど。
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