過去ログ - ビッチ・2
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197:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/09(木) 23:32:44.52 ID:eJmhesKmo

「こんなところでどうしたの?」

「今日学校が早く終ったからおまえを迎えに来てみた」

「・・・・・・突然何よ、それ」

 明日香が赤くなった。

「帰ろうか」

「うん」

 明日香が手に力を込めて僕の手を握り返した。

 明日香は僕の告白に納得して、僕のプロポーズに応えてくれた。でも、あんな一言だけ
でこれまでの僕の不誠実な行動への不安が一掃されるわけがないのだ。僕と明日香は将来
を約束していろいろな障害を乗り越えたと思っていた。でもさっきの明日香の俯いた顔が
僕の頭を離れなかった。明日香の愛を受け入れてから無邪気に僕に抱き付いていたその態
度を、僕は心からのものとして受け入れていたのだけど、実は明日香も悩んでいたのだろ
う。お互いに抱き合いながら密かに悩んでいたのは僕だけではなかったのだ。

 それに女さんと兄友のあの偏見に満ちた意見。奈緒と比較すると明日香がまるで無条件
にビッチな女のようなあの言われ方。兄友の方はまだしもましだった。あいつが問題にし
たのは僕の不誠実な態度だったと思うから。でも女さんは違う。明日香と奈緒を比べて奈
緒の方が僕にふさわしいと言ったのだ。明日香が奈緒より劣っているような言い方を女さ
んは無意識なのだろうけど、そう言外にほのめかしたのだ。

「あたし、買物して帰らないと」

 明日香が僕を見てそう言った。

「買物?」

「冷蔵庫に何もなくなっちゃったからね。食材とか買っておかないと」

「じゃあいつものスーパーに行く?」

「うん。すぐに済むから先に帰っていて。それとも本屋とかで待っていてくれる?」

 明日香は女の子として彼女として奈緒より劣ってはいない。少なくとも僕にとっては。
僕はもっと彼女を大切にすべきだ。僕はそのとき改めて強くそう思った。

「一緒に行こう。荷物持つよ」

「お兄ちゃん、退屈じゃない?」

「いいよ。僕だって食べるんだし」

 明日香が僕の手を握ったまま少しだけ笑った。

「そうだね。じゃあ行こう」

 スーパーでの買物に慣れていないという意味では、明日香と僕のスキルは同程度だった。
こういうとき家庭的な女の子なら、明日香のように迷いはしないのだろう。

 何が食べたいって聞かれた僕は、何でもいいというテンプレのようなどうしようもない
返事を明日香にした。それを聞いて明日香の方も混乱したようだった。彼女にも明確なビ
ジョンはなかったみたいだ。もっともあれが食べたいと答えたところで必要な食材を明日
香や僕が選べたかというと、その可能性は少なかっただろう。

 結局、今晩の食事の内容が決まらないままレジに進むことになった。僕が押していた
カートに置かれた買い物籠の中には、手当たり次第に放り込んだスナック菓子やカップ麺
しか入っていなかった。


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