204:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/20(月) 22:35:05.17 ID:ctdSSd06o
次の土曜日、僕はもう奈緒をピアノ教室に迎えには行かなかった。十一時頃になっても
リビングのソファに座ったまま付けっぱなしのテレビをぼうっと見ている僕を、明日香は
何か言いた気にちらちらと眺めていた。さりげないつもりだったのかもしれないけど、そ
の視線はあまりにも露骨だったのでしまいには僕は笑い出した。明日香は戸惑ったように
僕を見た。
「何笑ってるの?」
何を考えているのか丸わかりだ。やっぱり明日香のこういう思考回路は可愛い。
「行かないよ」
「へ」
「だからもう奈緒のピアノ教室には行かないって言ってるんだよ」
「何で? あたし、もう気にしてないのに」
「明日香を気にしているからじゃないよ。僕がおまえのそばにいたいから」
「何言ってるの」
「奈緒を迎えに行くよりここで明日香のそばにいたいからね」
「・・・・・・・バカじゃないの」
明日香が顔を赤くした。
「まあとにかく今日は出かける予定はないよ」
「突然どうしたのよ」
赤い顔のままで明日香は僕を見上げるようにした。
「どこかに遊びに行く?」
「はい?」
「どこかに遊びに行く?」
僕は繰り返した。
「さっきから何言ってるの」
「デートに誘ってるんだよ」
「お兄ちゃん、熱でもあるの」
「どうしてそうなる。彼女を遊びに誘ったらいけないの?」
「奈緒ちゃんか玲子叔母さんと何かあったんでしょ」
明日香の顔色が赤から青い顔に変わった。口調もだいぶ恐く真剣なものになった。
「何もないよ。変なこと言うなよ」
「だって・・・・・・。家でゲームをするのが一番好きって言ってたお兄ちゃんがデートなん
て。絶対何かしでかしてそれを誤魔化そうとしてるでしょ」
疑惑を抱いた明日香の誤解を解くのは結構大変だった。それでもひどい結果に終った年
末の深夜以来初めて、僕は明日香を外に遊びに連れ出すことができた。これまでもスー
パーでの買物とか一緒に外出したことは何度もあるけど、純粋に遊ぶために二人で外出し
たのは酷い結末に終った年末以来二回目だったかもしれない。
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