過去ログ - ビッチ・2
1- 20
215:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/30(木) 22:41:30.21 ID:6lUXOLOBo

 あたしは奈緒の綺麗な彩りのお弁当がうらやましかった。一緒にお昼ご飯を食べている
ときにあたしは奈緒に自分の昼食についての不満を漏らしたことがあった。

 今でもよく覚えているのだけれど、そのとき奈緒は知り合って初めて笑ったのだ。

「ユキちゃんのだっておいしそう」

 聞き取れないほど小さな声で彼女が言った。

「だって奈緒ちゃんのお弁当ってきれいじゃん。ユキも綺麗なお弁当の方がいい」

「でもおいしそうだよ。食べておいしければいいんだよ」

 すぐに納得できるような言葉ではなかったけれど、あまりあたしの発言に反応しない奈
緒が、これだけでも話してくれたことが嬉しかった。

「おいしくてきれいなほうがいいじゃん」

 奈緒にもっと話をして欲しかったあたしはわざと反論した。

「食べちゃえばいっしょだよ。おいしいだけで十分だよ」

 奈緒がまた反論してくれた。このときのあたしは、奈緒が食べ物すら与えられず自宅で
長期間放置されていた経験があることなんて知らなかったのだ。

「・・・・・・あたしのお弁当、食べる?」

 奈緒が相変わらず小さな声であたしの方を見ないで呟くように言った。

「いいの?」

「うん。食べてもいいよ」

 今となっては奈緒のお弁当から何をもらったのかは覚えていないけど、その何かがすご
くおいしかったことだけは記憶に残っている。それであたしは恥かしかったけど、奈緒に
あたしの茶色っぽいお弁当も食べるように勧めることができた。

 奈緒は素直に箸を伸ばしてくれた。

「とってもおいしいよ」

 奈緒があたしのお弁当をつまんでそう言ってまた静かに笑った。その微笑みがあたしに
はとても嬉しかった。

「そう? でもあたしのお弁当はナオちゃんみたにママが作ってくれたわけじゃないもん。
ママは死んじゃったんだし」

 そのときは別に奈緒に慰めてもらおうとか考えていたわけじゃなかった。でも奈緒は再
び俯いて黙ってしまった。あたしはそんな奈緒の様子に狼狽した。別に自分の不幸自慢を
するつもりはなかったから。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice