226:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/03(月) 23:12:17.80 ID:Da4jKH6wo
「怜菜はね、あたしの親友だったの。今にして思うとあたしが一方的にそう考えていただ
けなのかもしれないけど」
おばさんがカップをソーサーに戻して唐突に話し始めた。あたしはもう何も言わずにお
ばさんの話を聞こうとしていた。それが当初の目的だったから。
「有希ちゃんはさ、本当に親しい女の子の友だちっていっぱいいる?」
そう言われてみると心もとない。奈緒が本当に親しい友人ではなくなってしまったとし
たら、あたしにはそんな子は一人もいなかった。今さらだけどあたしには仲のいい友だち
なんていないのだとこのとき気が付いた。
おばさんはあたしの返事を待たなかった。
「おばさんにはね。大学に入った頃、怜奈以外には仲のいい友だちなんかいなかったの
ね」
「うん」
こんな綺麗で優しいおばさんがぼっちだったというのは意外だった。容姿やピアノの技
術、家事の能力などからあたしは今まで恵まれたリア充の典型だと思っていたのだ。
「怜奈は、有希ちゃんの叔母さんはとっても人気があったし知り合いも多かったんだけど、
何でかなあ。あまり友だちのいないあたしといつも一緒にいてくれたのね」
「あなたの叔母さんはね、本当に綺麗な人だったんだよ。別に綺麗って見た目だけじゃな
くてね。何て言えばいいのかなあ。考えとか行動とかを含めて、本当に天使みたいな女の
子だったなあ」
麻紀おばさんは、もうあたしのことなんか気にすることはなく自分語りを続けた。おば
さんがなんであたしなんかに自分の秘密を打ち明けようと思ったのかはわからない。ひょ
っとして、何かの意図があってあたしを自分の駒にしようと思ったのかもしれない。でも、
おばさんの意図がどうあれあたしにとっては知りたいことがわかるのだ。あたしのオペ
レーションにとって必要な情報が得られるのかもしれないのだ。
「怜菜は大学時代のあたしにできたただ一人の友だち、親友だったの」
麻紀おばさんはあたしの様子を全く気にすることなく話を続けた。
た。
「最初に怜奈を裏切っちゃったのはあたしの方なんだけど、結局あたしは怜奈に復讐され
ちゃったのね」
おばさんが語り出した話は興味深いものだった。怜奈叔母さんのことをあたしはほとん
ど知らなかった。パパのデスクに飾ってある写真の叔母さんは綺麗な人だった。でも怜奈
叔母さんの性格や交友関係、それに何で叔母さんが鈴木のおじさまと結婚しパパに黙って
離婚して奈緒を出産したのか、そのあたりの事情を含めてあたしは叔母さんについては何
も聞かされていなかったのだ。あたしはもう黙って固唾を飲んで麻紀おばさんの話しに聞
き入った。
「有希ちゃん、奈緒人のことは知っている?」
「あ・・・・・・、うん。最近、奈緒ちゃんと知り合った男の子でしょ。確か、明徳高校の一年
生の人」
「奈緒から聞いてたのね。その奈緒人ってね。あたしの息子なの。訳あって父親に引き取
られちゃったんだけど、あたしにとっては誰よりも大切な子」
「誰よりって・・・・・・。奈緒ちゃんや鈴木のおじさまよりも大切なの?」
「ああ、そうね。誰よりもというのはちょっと大袈裟だったね。正確に言うと博人さんと
奈緒、それに奈緒人があたしにとっては誰よりも大切なの」
麻紀おばさんは自分の旦那である鈴木のおじさまの名前を出さなかった。
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