過去ログ - ビッチ・2
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230:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 23:59:08.64 ID:28rfn7MVo

 それから二時間かけてあたしは麻紀おばさんの話を聞いた。最初はこんなどろどろした
話を娘の友だちの中学生にするかという気がしないでもなかったけど、聞いているうちに
あたしは麻紀おばさんの話にのめりこんでいった。それは、今ではいい年の大人たちがか
つて愛憎をぶつけ合っていた話だ。結局、あたしも奈緒も奈緒人さんもその愛憎劇の尻拭
いをさせられているのかもしれない。親の因果が子に報いる・・・・・・。あたしはおばさんの
話に集中しながらも頭の片隅で何となくそんなことを考えていた。

 何だかあたしはむかついた。考えるほど麻紀おばさんの話は理不尽なことのように思え
てくる。

 あたしがパパに傷つけられたのも、奈緒が奈緒人さんへの愛情に悩んでいるのも、全部
大人たちの昔の非常識な行為の結果だったらしいのだから。そうと思うと何だか無性に腹
が立つ。

 これではまるで親たちの世代の相克をあたしたちが引き受けているのと同じだ。これで
はあたしたち自身のアイデンティティなんでまるでないのと同じじゃないか。

 あたしはそんなことに踊らされない。自分の意思で行動する。パパを裏切ることはあた
し自身が破滅に至る道のりなのかもしれない。パパのアシストがなければ正直言ってあた
しのはねっかえりの商売なんか成り立たない。そんなことは最初からわかっていた。それ
でもついにこのときがきた今、あたしは躊躇しなかった。

「今でもおばさんにもわからないの。おばさんが本当に悩んだことは、怜奈と奈緒人さん
がお互いに惹かれあったことなのかどうかって。でも確かなことは、もうこれ以上怜菜の
思うようにはさせないって思った自分の決心だけだった。それだけを考えて今まで生きて
きたのよ」

 怜奈叔母さんは本当に事故死ではなく自殺したのだろうか。おばさんの話で一番衝撃的
だったのはこの部分だった。パパにはそんなことを聞いたことがない。そして、怜奈叔母
さんは非常識にも自分の切ない想いを本当に自分の娘に、奈緒に託したのだろうか。

 それが麻紀おばさんの妄想だったらいい。あたしはそう思った。普通に考えたら麻紀お
ばさんの被害妄想も行き過ぎているというしかない。でも、それにしては奈緒と奈緒人で
の出会いといい結果的に二人がお互いに求め合っている現状といい、おばさんの妄想とし
て片付けてしまうにはできすぎている。

 パパと奈緒への復讐にもう少しだけましな理由を付け加えることができそうだ。それは
大人たちからの因縁から自分たちを開放するということだった。おばさんの話を聞きなが
らあたしはそういうことを考えていた。人間とは弱い者なのだから、何をするにしても大
義名分というのは必要だ。あたしのようにたいていの常識を無視できる人間にとっても。

「・・・・・・結局怜菜は何も話さずに亡くなっちゃったのよね。残されたあたしたちはは彼女
の意図を一生懸命探ろうとして右往左往するばかりだったのね」
 おばさんが自嘲的に笑った。「そんなことで悩んじゃって、あたしは博人君ともぎくし
ゃくしちゃった。正直、それこそが怜菜の目的なんじゃないかって思ったこともあった
よ」

「それにしても自分の娘と奈緒人さんに希望を託すなんて、そんなひどいことを怜奈叔母
さんが考えたなんて」

 あたしはおばさんに言った。


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