過去ログ - ビッチ・2
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235:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 00:05:50.72 ID:1Ed2VqjZo

「・・・・・・・いい加減にしろよ」

 僕はなるべく怒りを抑えて冷静に話そうとした。でも幸か不幸か僕の感情はその言葉に
乗って外に迸り出てしまったみたいだ。そのせいか明日香は初めて僕と目を合わせた。

「何かおまえの気に障ることしたのか? それはいっぱいおまえに心配かけてきたけど、
今は明日香だけだって言ったじゃないか」

「・・・・・・そんなのわかってるよ」

「じゃあ、何で昨日からそんなにふさぎこんでるんだよ。僕の思い違いじゃなければ、僕
はおまえにプロポーズしたよな? それでおまえもそれを受け入れてくれたんだろ。それ
なのにそれが結婚を約束した相手に対するおまえの態度なの?」

 このとき僕は不覚にも涙を浮べてしまったようだった。それがよかったのかもしれない。
明日香が昨日以来初めて心を開いてくれたのだ。

 でも、それは聞かなかった方がよかったという類いの話だった。

「ごめん、お兄ちゃん」

 明日香がぽつりと言った。

「・・・・・・本当に何で? 僕のこと嫌いになったのならそう言ってくれよ。そしたら寂しい
けど僕だっておまえのことを諦めるから」

「それくらいで諦めちゃうの?」

 明日香が言った。さっきと違って今度は明日香の目に涙が浮かんでいた。

「いや、今のは取り消し。僕はおまえのことを諦めない。・・・・・・本当に嫌いになったの
か?」

「なってないよ」
 明日香が突然僕に抱きついた。「嫌いになんてなるわけないじゃん」

 僕は明日香の身体を抱き返した。明日香の嗚咽が近いところから聞こえる。

「本当にどうしたの?」

「・・・・・・あたし、自分が嫌だ。お兄ちゃんの彼女なのに。お兄ちゃんの婚約者になれたの
に」

「何が嫌なんだよ」

 このとき泣いている明日香には悪いけど、僕はようやくほっとしていた。この様子では
僕は明日香に嫌われたわけではないらしい。もちろん明日香に悩みがあるのはわかってい
たけど、それを打ち明けてくれれば、僕たちなら一緒に乗り越えられると思ったからだ。

「大好きだよ明日香」

 僕の腕の中で明日香が震えた。

「あたしも」

「悩んでいるなら聞かせてくれよ。一緒に考えて乗り越えようよ」

「自分が嫌なの。お兄ちゃんに教えてあげなくちゃって思いながらも、もしもそれでお兄
ちゃんに振られたらって思って恐くて。そんなことを考えて、お兄ちゃんに隠しごとして
いる自分が嫌なの」

「僕は明日香のこと振らないよ。むしろ、おまえに振られるんじゃないかって気が気じゃ
ないんだから」

 僕は明日香に笑って見せた。明日香は僕の腕の中で少しだけためらっているようだった。

「明日香?」

 明日香はようやく途切れ途切れに小さな声で話し出した。

「有希から電話で教えてもらったの。お兄ちゃんと奈緒は実は本当の兄妹じゃないって。
二人は血は繋がってないって。お兄ちゃんと奈緒は付き合おうと思えば付き合えるんだよ
って」


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