過去ログ - ビッチ・2
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239:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/12(水) 23:15:15.76 ID:kCQODl6lo

「お兄ちゃん、暖かい?」

 僕は無理に奈緒に微笑みかけた。

「うん、暖かいよ」

「そうか。よかった。見た目は悪いかもしれないけど、風邪をひくよりはいいよね」

「ありがとう。っていうかごめん」

「ごめんって何で?」

「奈緒へのプレゼント用意してないや」

「ああ」
 奈緒が微笑んだ。「しかたないよ。あたしがイブには会えないってお兄ちゃんの誘いを
断ったんだから」

「今度埋め合わせさせてよ」

「別にいいのに・・・・・・。でも嬉しい」



『お兄ちゃんが実の妹と付き合ったことを知ったら傷付くだろうって。それだけを
考えてたのにね。あたし、ばかみたいだよね』

 明日香の湿った声。

『あたしのしたことは全部余計なことだったんだね。お兄ちゃんも博之にも迷惑かけちゃ
った』

『そんなことは・・・・・・』

 ないって言おうとしたけど客観的に言えば明日香の言うとおりだった。

『あたしが余計なことをしなければ、お兄ちゃんはあんなつらい思いをすることはなかっ
たし、奈緒とは今でも』

 僕は腕の中にいる明日香を慰めようと思った。こいつは今では僕のフィアンセなのだ。

 第一に女帝疑惑のある有希が、善意から明日香に本当のことを言ったかどうかなんてに
わかには信じられない。そして第二にたとえ結果として明日香が僕と奈緒の仲を邪魔した
動機が間違いだったとしても、それは悪意ではなく単なる勘違いによるものだ。それもど
う考えても無理のない勘違いだ。

 だから僕は昨晩、混乱し震えている明日香をずっと抱きしめていた。ずっとぐずってい
た明日香は夜中になるとようやく僕の腕の中で眠りについた。今夜は帰ってくるはずの両
親は帰宅しなかった。

 今朝の明日香の態度はいつもどおりだった。結局、僕たちはリビングのソファで不自由
な姿勢のまま抱き合いながら朝を迎えた。窓越しに射し込む陰鬱な冬の陽光に起こされた
僕たちは、もう昨夜の話題を蒸し返さなかった。明日香が甲斐甲斐しく用意してくれた
(でも焦げていて苦かった)ハムエッグを食べた僕は、奈緒との約束の時間ぎりぎりに家
を出た。明日香にも、このあと僕がいつものように奈緒と一緒に登校することはわかって
いたはずだけど、彼女はそのことについては何も言わなかった。

「いってらっしゃい」

 明日香が僕に言った。

「うん」

 僕は明日香を抱きしめてキスしようとした。明日香は僕を避けなかったけど、積極的に
応じようともせずただされるままになっていた。何となく行き場を失った手を下ろしなが
ら僕は家を後にした。


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