254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 23:46:02.21 ID:pVbkLglno
「あれ嘘だから」
僕は思わず女さんに言った。
「黙ってて。お願い」
声を出さずに涙を流しながら女さんは二人の会話に集中しようとしていた。
兄友はすぐに否定するだろう。僕はそう思った。
明日香が一時池山と付き合っていたことは事実だった。そのことは否定するまでもなく、
一緒に遊んでいた兄友も女さんもよく知っていたことだった。
だけど、明日香は僕を救うために池山やその仲間たちと縁を切り、僕の側に僕だけの側
に寄り添う決心をしてくれた。そこには明日香が兄友と浮気をする余地なんて全くない。
「何でそんな嘘言うんだよ。明日香ちゃんがそんなこと言うわけねえじゃん」
「兄友さんこそ誤魔化さなくてもいいじゃないですか。兄友さんって格好いいし、明日香
ちゃんが揺らいじゃっても不思議はないですよ」
「・・・・・・そんなこと言われてもなあ」
不思議なことにこれだけ荒唐無稽な話を聞かされたら、怒って席を立ってもいいはずの
兄友が考え込んだような口調で呟いた。
「どうしました?」
「確かに四人で遊んだことは事実だけどさ。俺、本当に明日香ちゃんと浮気なんかしてね
えんだけどな」
「でも、明日香はそう言ってましたけど」
「明日香ちゃん、何でそんな嘘言ったんだろ」
「本当に嘘なんですか」
「ああ。マジで確かだよ」
「じゃあ、明日香の願望とか思い込みだったのかなあ」
「さあ。確かに四人で遊んでいるとき、明日香ちゃんって俺の彼女にはほとんど話しかけ
なかったからさ。何でだろうとは思ったんだけどな」
「そんなの決まってるじゃないですか。兄友さんの彼女さんに嫉妬してたからですよ、明
日香は池山さんより兄友さんの方が好きだったんですよ」
「勝手に決め付けるなよ。明日香ちゃんが池山のことをどう考えていたのかはともかく、
俺のことが好きだなんてありえねえよ。彼女は奈緒人のことが好きだったんだって」
「奈緒人さんは奈緒ちゃんの彼氏です。それに実の兄妹で付き合うわけなんかないでし
ょ」
「そうじゃねんだけどなあ」
「明日香が兄友さんの彼氏にほとんど話しかけなかったって本当ですか」
「ああ」
「じゃあ、もう答えはそこで出ているじゃないですか。何度でも言いますけど、明日香は
兄友さんのことが好きだったんですよ」
「いや・・・・・・」
「兄友さんの彼女さんが明日香に冷たい態度をとったって本当?」
「それは」
「本当なんですね。彼女さんも何か気づいていたのかもしれませんね」
「そんな彼女さんのきつい態度に傷付く明日香を兄友さんがさりげなくフォローしてたん
でしょ」
「・・・・・・」
「明日香ちゃんと浮気したでしょ」
兄友が何かを低く答えたようだったけど、声が小さすぎてこちらまでは聞こえなかった。
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