過去ログ - ビッチ・2
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270:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 22:29:35.95 ID:Is8mwlDMo

 シャワーを浴びて戻るとテーブルの上に明日香が用意しておいてくれた料理がラップに
包まれて置いてあることに気がついた。

 奈緒と僕が兄妹じゃなかったことに明日香は悩んでいた。明日香が僕に会うのを避けて
玲子叔母さんのところに避難したことも半ば予想どおりの行動だった。その場合、僕はど
こまでも明日香を追いかけようと思っていた。

 でも今ではよくわからなくなっていた。あの頃の明日香の行動は無軌道で衝動的なもの
だった。そんなことは一緒に暮らしていた僕が目の当たりにしていたことだった。だから
僕と付き合いだす前の明日香が池山を裏切って兄友に抱かれていたくらいで動揺すること
なんて何もないのだ。

 もう何度になるかわからないくらい、僕はそのことを自分に言い聞かせた。僕だって奈
緒との因縁がある。そんなお互いの過去なんて承知のうえで僕と明日香は求め合い将来を
約束しあったのに。

 再び思考がループに陥った。今日はただ悩みながら眠れぬ一晩を過ごす覚悟を決めたと
ころで、携帯電話が鳴った。ディスプレーも見ずに僕は反射的に電話に出た。

「何があった?」

 玲子叔母さんの不機嫌そうな声が耳に響いた。

「あんた、明日香に何をした」

「・・・・・・叔母さん?」

「仕事から帰ってみればあたしのマンションの前で明日香がうずくまって泣いてたのよ。
何を言ってもろくに返事さえしないし。誰があんたに明日香を傷つけろて言ったのよ?
あんた最近。いろいろといい気になってるんじゃないでしょうね」

「何を言われてるんだかわかんないよ。明日香がどうしたって言うんだよ」

 何で自分がこんなに冷静に返事ができているのかわからない。明日香の悩みなんて奈緒
と僕との間に血が繋がっていなかったことに決まっている。明日香が悩んでいることは嘘
ではない。それは僕だってわかっている。でも、今うずくまって泣きたいのは僕の方だ。

「とにかく明日香をお願い。一晩泣けばまた元気になると思うから」

「・・・・・・ふざけんな」

 玲子叔母さんの声が電話の向こうで低く沈んだ。こういうときは叔母さんは本気で怒っ
ているのだ。一瞬、叔母さんの細い身体を抱きしめてキスしたとき、目を瞑って体から力
を抜いた叔母さんの身体の記憶が頭に浮かんだ。

「明日香を大切にしろって言ったでしょ。そのためにあたし・・・・・・」

 叔母さんの声が低いのは怒っているせいもあるだろうけど、明日香に聞かれないせいも
あるのかもしれない。

「まあ、いい。・・・・・・いったい何があったのよ。あんたが明日香のことを気まぐれに傷つ
けるとは思わないけど、それにしても明日香の状態ってすごくひどいよ」

「ちゃんと話すから。とにかく今晩は明日香をお願い。じゃあ」

「ちょ、ちょっと。今話せよ。それにあたしも今日は平井さんと会ったんでその話もある
んだけど」

「ごめん叔母さん。明日また連絡するね。じゃあ」

「おい奈緒人。ちょっと」

 僕は電話を切った。自分が目の前の問題から逃げているだけなのはわかっていたけど。


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