過去ログ - ビッチ・2
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291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/04(木) 23:46:38.20 ID:j39CgiDpo

「食べないの? 覚えていないかもしれないけど、そのケーキは昔奈緒人と奈緒の大好物
だったのよ」

 お姉ちゃんがそこで話しをいったんとぎって僕に微笑んだ。

「僕と奈緒を離れ離れにさせたのは父さんだってってこと?」

 僕は今まで考えもしなかった事実を聞かされ呆然としていた。複雑な事情がありそうだ
とは思っていた。そしてその黒幕はママ、つまり麻紀さんという女の人だろうとも。その
ことは玲子叔母さんからも確かなことは言えないけどという前提付きで聞かされてもいた。

 いろいろ僕の知らない事情もあるのだろう。単純にママの浮気や育児放棄だけが奈緒と
の別離の原因だと考えていたわけではなかった。

 僕は父さんと新しい母さんに、とりわけ父さんには感謝していたし、明日香に嫌われて
いた頃はひねくれながらも父さんだけは唯一の自分の味方だろうと考えていた。

 その前提が根底から覆されようとしていた。

「兄貴と麻紀さんの両方がね。結局兄貴は麻紀さんを憎みきれなかったんだよね。あれだ
け兄貴自身に対しても君たち兄妹に対しても残酷なことを平然としでかした麻紀さんのこ
とをね」

 お姉ちゃんがどういうわけか自嘲するような複雑な表情で言った。初めて真実を知った
僕と違ってお姉ちゃんにとってははるかに昔の出来事のはずだけど、父さんのその行動は
今でもお姉ちゃんを傷付け苛んでいるのかもしれなかった。

 僕はもう本当に一人ぼっちだ。奈緒と知り合い明日香と仲直りして僕の人生は立ち直っ
たのだと思っていたけれど、結局それは幻想に過ぎなかったようだ。

 奈緒とは付き合えない。これだけこじれてようやくお互いに着地点らしい場所を探し当
てたのに、今さら奈緒に対して僕たちは血が繋がっていないから前のように恋人同士に戻
ろうなんて言えるわけがない。

 自分の彼氏を平気で裏切った明日香のことを許せるのかどうかだって、今だにわからな
い。ひょっとしたらもう僕と明日香の仲は駄目かもしれない。たとえ僕の方が明日香を許
せたとしても、兄友との浮気を僕に知られたことを明日香がしったら、明日香の方から距
離を置かれてしまうかもしれない。

 玲子叔母さんだってきっと怒っている。明日香を悲しませてしまった僕に対して。

 そして僕は身近にいる唯一の身内である父さんに対してまで不信感を覚えることになっ
てしまった。もう本当に僕はひとりぼっちだ。僕はその事実を自分をわざと傷つけるよう
に繰り返し考えた。

「今日は奈緒人にこんなことを言うためだけに来てもらったんじゃないの」

 注意深く僕の表情を見守っていたらしいお姉ちゃんが言った。

「奈緒人。あたしは兄貴と君たちのためなら自分のキャリアを捨てるつもりだった。君た
ちが大好きだったから。あのつらい時期に無条件にあたしを頼ってくれた小さな奈緒人と
奈緒のことが、今でも大好き。だから自分に味方がいないなんて考えないで。あたしは君
たちの味方だよ。誰にも内緒で奈緒人と奈緒に携帯電話を持たせたりしたのだっ
て・・・・・・」

「お姉ちゃん」

「有希ちゃんが教えてくれたの。最近奇跡的に君と再開した奈緒を、また麻紀さんが君か
ら引きはがそうとしているって」

「え?」

「有希ちゃんは奈緒の味方だよ。そして彼女は奈緒と君を仲直りさせようとしているの。
自分の父親と麻紀さんに逆らってまで」

「どういうこと?」

 意味がわからない。僕は再び混乱した。

 あの女帝が、不良を束ねてドラッグの商売をしている有希が、多分悪意によって玲子叔
母さんを年下の不良たちに乱暴させようとしたあの有希が、奈緒のことだけは本気で気に
しているとでも言うのだろうか。

「何でお姉ちゃんは有希さんのことを信じてるの」

「それはね」

 お姉ちゃんの話は再び父さんたちの離婚の頃まで遡った。


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