過去ログ - ビッチ・2
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296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:44:33.22 ID:4z1h5cCXo

 その日以来、あたしは情けない兄貴のことを、あれだけ小さな頃から大好きだった兄貴
のことを見限った。いや、あたしの好きだった兄貴はとうにいなくなっていたのだろう。
お互いに慕いあっている自分の二人の子どもを、前妻に気を遣って平然と引きはがして傷
付けるような奴はあたしの知っている兄貴じゃない。奈緒人と奈緒は深刻な心の傷からよ
うやく立ち直ったばかりだった。兄貴や両親、そしてあたしも二人の心の傷をいやすこと
を最優先してここまで頑張ってきた。そしてようやく二人の子どもに屈託のない笑顔が戻
って来た。そんな二人に兄貴は追い討ちをかけるように残酷に二人を引きはがそうと決め
たのだ。

『何であんなに仲のいい二人を引き離すなんてことができるのよ。あたしが何のために奈
緒人と奈緒の面倒をみていたと思ってるの』

 あたしは取り乱して兄貴を責め立てた。兄貴は俯いてしまった。そして何も言いわけを
しなかった。ただ、どんなにあたしに罵られても決心を変えることはなかった。

 あたしは兄貴と二度と関らないことを決めた。奈緒人と奈緒のために捧げた献身的な時
間は惜しくはないけど、そのあたしの想いは結果的に兄貴の麻紀さんに対する未練に負け
たのだ。

 あたしの大好きだった兄貴は死んだのだとあたしはようやく悟った。麻紀さんのせいで
兄貴は変わってしまったのだ。離婚してもなお、麻紀さんは兄貴の心を支配していたのだ。

 そうだ。兄貴は死んだ。今目の前にいる人間は兄貴とは別人だ。

 確かに奈緒は兄貴の実の娘ではないかもしない。麻紀さんの裏切り発覚後、兄貴は二人
を分け隔てなく愛しているのだとあたしは思っていた。でも今にして思うとそれは単なる
思い込みに過ぎず、兄貴にとっては血の繋がっていない奈緒よりも、自分を裏切り子ども
たちを虐待した麻紀さんの方が大切だったわけだ。

 麻紀さんの虐待紛いのネグレクトに傷付いた奈緒人と奈緒は、ようやくその傷も癒えて
いたというのに再びもっとひどい仕打ちを受けることが決まってしまったのだ。大好きな
父親の決断によって。

 兄貴のことはもうどうでもいいけど、あたしは奈緒人と奈緒が別れさせられると知らさ
れたときの心情を想像するといてもたってもいられない気分になった。

 せめてできることをしよう。あたしは自分の名義でキッズ携帯を二台契約した。あまり
早く渡すと兄貴に気づかれてしまうかもしれない。あたしはもう僅かしか残っていない奈
緒人と奈緒と一緒に過ごせる日々を、必死になって笑顔だけを見せるようにしながらその
チャンスをうかがった。

 調停が終了すると、自業自得ながら麻紀さんの要求を飲むことを選んだ兄貴には味方が
いなくなった。唯一の例外は理恵さんだけだった。

 奈緒人と奈緒を残酷に引き離す結論を出した兄貴に対して、お父さんとお母さんは戸惑
い諭しそして最後には兄貴に対して縁切りを言い渡した。


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