30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/22(金) 23:48:09.01 ID:/e7W3Teeo
『たださ、死んだ怜菜相手には勝てないかもしれないけど負けないこと、いや少しでも負
けを減らすことはできるかもしれないね』
声は少し考え込んでいるように間をあけた。
『どういうこと?』
『今にして思えば君は、いや、君と私は完全に怜菜の仕掛けた罠に嵌ったんだよ。完膚な
きまでにやられたね。そもそも怜菜は何で鈴木先輩なんかと結婚したんだと思う?』
『それは・・・・・・あたしだって不思議だったけど』
『先輩が電話で言っていたこと。怜菜は麻季の情報を先輩に伝えて、まるで先輩に対して
麻季と接触させようとけしかけていたみたいだったって』
『うん。彼はそう言ってたね』
『そして先輩と君は出合って、怜菜の計画どおり不倫の関係になった。その後、彼女は博
人に接触して、君と先輩がまだ連絡をとりあっていることを博人に告げ口したよね』
『・・・・・・じゃあ全部怜菜の計画どおりだったってこと?』
『うん・・・・・・そしてさりげなく怜菜は博人に自分の想いを告白した。怜菜に誤算があった
とすれば、博人がその場では怜菜の気持に応えなかったことでしょうね』
『そのときはあたしは怜菜に負けていなかったってこと?』
『うん、そう思う。でも、怜菜は賢い子だし思い切って自分の考えを貫く強さを持ってい
た。大学の頃からそうだったじゃん』
それは声の言うとおりだった。一見大人しそうな怜菜は自分が決めたことは貫きとおす
強さをその儚げな外見の下に秘めていた。麻季なんかと一緒に過ごさなかったら、怜菜は
学内の人気者だったろう。それなのに彼女は麻季と二人でいる方が楽しいと言ってくれた。
『怜菜は離婚して奈緒を出産するまで待った。そして、そのときが来ると迷わず車に身を
投げたんじゃないかな』
『博人君の心の中で永遠に彼に愛されるためだけに?』
『うん。でも怜菜はもっと先まで考えていたんじゃないかな』
『わからないよ。これ以上何が起こるの』
『確かに死者には勝てないかもしれないけど、博人君は君には優しいし君がこのまま良い
妻でよい母でい続ければ、怜菜の記憶だっていつかは薄れていって、君への本当の愛情が
戻るかもしれない』
麻季はその言葉に一筋の希望を見出した気分だった。たとえ今がどんなにつらくても何
年かかっても何十年かかろうとも博人の愛情が戻ってくるなら・・・・・・・。
『でも、そのことも怜菜はちゃんと考えていたんだろうね』
『どういうことよ』
『奈緒を見てればわかるでしょ。あの子は怜菜にそっくりじゃない。先輩の面影なんか全
然ないよね。この先可愛らしく成長する奈緒を眺めるたびに、博人は怜菜のことを思い出
させられるんだよ』
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