過去ログ - ビッチ・2
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300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:49:56.10 ID:4z1h5cCXo

 後になって両親から聞いたのだけど、兄貴は翌日の夜奈緒人と奈緒に今後彼らがどうな
るのかを話したらしい。あたしが夕食の支度をしている隙を見てそうしたのだ。二人は兄
貴の隙をついて家出した。二人はすぐに警察に保護されたのだけど、迎えに行った兄貴と
一緒に帰って来たのは虚ろな目をした奈緒人だけだった。結局あたしは奈緒に最後のお別
れさえ言えなかったのだ。

 数週間後、新しいマンションを購入し理恵さんと入籍した兄貴は奈緒人を連れて実家か
ら出て行った。それまでの間せめて奈緒人とだけでも一緒にいてあげたかったけど、奈緒
人はあたしが話し掛けても抱きしめても全く反応しなかった。多分、彼の中ではあたしも
兄貴と一緒で彼から妹を引きはがした存在として認識されてしまったのかもしれなかった。

 奈緒人に嫌われたあたしは、最後の最後になって密かに彼に話しかけることができた。

「奈緒人・・・・・・元気でね」

 予想していたとおり彼は俯いてあたしの顔を見ようとすらしなかった。でもあたしはそ
れに構わず話を続けた。その場に兄貴がいないことを確認して。

「携帯電話無くさないで。その電話で兄貴や理恵さんがいないところで奈緒に電話しなさ
い。決して音を出しては駄目よ。教えたとおりマナーモードにしておくこと。あと奈緒も
すぐには電話に出られないかもしれないから、しつこく何度もかけちゃだめ」

 このとき初めて奈緒人があたしを見た。

「負けないで奈緒人。いつか絶対奈緒似合えるから」

 このとき初めて奈緒人の目に光が宿り表情が戻った。

「大好きだよ奈緒人」

 奈緒人とあたしはわずかな間だけどお互いを抱きしめ合って泣いた。奈緒人はやっとあ
たしにしがみついて泣いてくれたのだ。兄貴が車を回してくる音がしてお互いに身を離す
までのわずかな間だったけど。



 四月になり入社した企業での研修が始まったけどあたしには以前に持っていたこの仕事
への意欲は失われてしまっていた。兄貴を失ったこともつらいけど、奈緒人と奈緒を失っ
たことはもっとつらかった。二人を育てていた短い期間が充実していただけに二人を失っ
た反動は大きかった。

 追い討ちをかけるように、奈緒人と奈緒、それに兄貴にかまけて放置していた彼から別
れを告げられた。

「唯のこと大好きだったし結婚だってしたかったけどさ。これじゃ付き合ってる意味ない
じゃん」

 別れを切り出した彼は寂しそうな顔でそう言った。


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