過去ログ - ビッチ・2
1- 20
314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/16(火) 23:22:40.98 ID:AhPKC+s4o

 本当にそういう意図はなかったようで、これまで結城法律事務所で働いてき間、あたし
は一度も先生に誘われたりされたことはない。働き出すとここは思っていやより居心地が
よかった。最初は断るつもりで訪れた結城事務所だったけど、この日事務所を後にする頃
にはあたしはここで働くことになってしまっていた。

 小学校に入る前の有希ちゃんは幼稚園や保育園には行かず、日中は太田先生と一緒に車
で事務所に来て好き勝手に時間を過ごしていた。事実、信じられないことに有希ちゃんは
事務所内に専用の部屋を持っていたくらいだ。多忙な先生に代わって有希ちゃんの食事と
かの面倒は複数いる事務員の女性たちが喜んでみているようだった。

 あたしは弁護士ではなかったので、法人の社員にも訴訟代理人にもなれなかったから、
先生のほかに十人いる他の若手弁護士のように訴訟案件を任されるわけではなかった。か
といって弁護士に付いている秘書やその他の事務員とは違って、一応個室をもらってはい
た。そして任されていたのは訴訟の下調べや訴訟に至っていない段階での相手方との交渉
だった。今までは若手の弁護士にさせていたらしいのだけど、事務所の評判が上がって受
任案件が増えたせいで、弁護士でなくもできる仕事は資格のない職員に任せざるを得なか
ったらしい。かといって秘書や事務員の女性にできる仕事ではなかったので、法学部出身
者を雇用しようということになったようだ。

 あたしの待遇は、弁護士とは比較にならないけど、それでもこの法人に雇用されている
司法書士や行政書士と同程度には遇されることとなった。

 要は弁護士法に抵触しない業務を預ける人間が必要になったところで、太田先生があた
しを思い出したということらしい。

「法科大学院には行けないけど、業務中でも暇をみて予備試験の勉強をして司法試験の受
験を目指してもいいんじゃないですか」
 先生は穏かに言った。「別に司法試験に興味がないなら、普通に仕事していてくださっ
てもいいですよ。君の能力なら十分にできる仕事だし、仕事自体は面白いと思いますよ。
給料も前の会社以上を保証しますし昇給もありますしね」

 確かに太田先生の提示したのは好条件だった。これ以上の待遇をしてくれる職場なんか、
実績もないあたしには望むべくもない。太田先生があたしの体目当てでないとしたら、何
でこんな厚遇をしてくれるのか理解できないくらいだった。

 まあ、自分をよく知っているあたしは、太田先生のような人があたしごときを狙うこと
などないだろうなと内心では思い直しはじめてもいた。悔しいけど麻紀さんや理恵さん、
玲子ちゃんと比べても外見では劣っていることもよく承知していたし。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice