過去ログ - ビッチ・2
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315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/16(火) 23:26:18.87 ID:AhPKC+s4o

 収入がない状態で実家に寄生して勉強をしているよりもいいのかもしれない。別に本気
で司法試験なんか目指しているわけじゃない。兄貴や奈緒人、奈緒を失った喪失感から会
社の業務に興味をもてなかっただけなのだし。

 それでも会社の業務にやりがいを感じなかったあたしが太田事務所の仕事に興味を抱け
るのだろうか。自分でもよくわかっていたのだ。あたしはクズだ。

 せっかく順調に生きてきて希望通りの職種に就職できたのに、何でやりがいを感じない
のか。

 結婚しようとまで言ってくれた元彼のことをいったい何で放置したのか。

 全ては大学四年のあのとき、麻紀さんが兄貴との家庭を棄てたあのときに、自分が舞い
上がって非常識な夢を見てしまったせいなのだ。あのときのあたしは両親と一緒に麻紀さ
んを非難してののしった。

 でも、あのときのあたしは実は内心では喜んでいたのだ。子どもたちや兄貴のつらい思
いをよそに、育児を引き受けて兄貴を助けることができることに対して。

 兄貴に頼ってもらえることに対して。

 兄貴と子どもたちと四人で外出し、まるで家族のように振る舞うことに。あのときのあ
たしは、兄貴と同じくらい二人の子どもたちが大好きだったのだ。

 だから冗談めかしてはいたけど兄貴には何度も言ったのだ。就職をやめてあの子たちを
育ててもいいと。兄貴の奥さんになってあげてもいいよとまで。

 結局あたしのその想いは麻紀さんに負けた。別に太田先生に負けたのではない。あれだ
けひどいことをした麻紀さんに対する兄貴の未練に、あたしは完敗したのだ。

 理恵さんのことは恨んではいなかった。むしろ兄貴のためを思って味方したつもりだ。
それでも、兄貴と理恵さんが夫婦になっても、奈緒人と奈緒はあたしのことを本当の母親
以上に、そして新しい母親である理恵さんよりもあたしをずっと慕ってくれるだろうと思
っていた。

 でも、奈緒人と奈緒は残酷に引き離された。二人を慈しんで大切にすべき兄貴と麻紀さ
んの意思によって。

 思い出しても仕方がない記憶に悩んだとき、最近のあたしはいつも携帯電話の請求明細
を見る。ほんのわずかな通話料が記されてる。これだけが、大学卒業前のあたしの行いに
対する唯一の報償だったのだ。

 いつまでもこんな負の感情に身を任せているわけにはいかなかった。あたしは半ば自棄
になっていたのだろう。あたしは太田先生の事務所への転職を了解した。


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