過去ログ - ビッチ・2
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327:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/24(水) 23:49:04.52 ID:WX+iqy8+o

 これを受け取るのは気が進まなかった。何か太田先生のこの新しい事務所はうさんくさ
い。正直に言えば関わりたくない匂いがプンプンとしている。

「座ったら」

 有希ちゃんがあたしにそう言った。

「もうすぐ勤務時間が始まっちゃうからそろそろ帰らないと」

「そんなに忙しくないんでしょ? 少し付き合ってよ」

 忙しくないのは本当だけど、あからさまに言われると何か悔しい。いくらボスの娘だと
しても中学生ごときに言われて楽しい話題ではない。

「どうせやりがいもないのに惰性でやってるんでしょ。いいじゃん、少しお話しようよ。
本当は今日は唯ちゃんとお話できないかなって思って、それで学校を仮病でさぼってまで
ここに来たんだよ」

 すごく失礼な言葉だったけど、同時に彼女が正確にあたしの気持ちを理解したうえで言
っていることは理解できた。これでは否定しても見透かされてしまうだろう。やはり、こ
の子は恐い子だ。それに有希ちゃんがあたしに話ってなんだろう。しばらく会わなかった
有希ちゃんの言葉にあたしは好奇心をそそられていた。

「庶務頭に電話して唯ちゃんには別な仕事があるって言っておくね」

「ええ、ちょっと」

「うん? ああ、庶務頭じゃ駄目か。じゃあ佐宗先生に言っておく方がいいか」

「・・・・・・いいよ。自分で電話するから」

「やった」

 有希ちゃんは可愛らしく微笑んで嬉しそうに自分の両手を握って振った。

 佐宗先生は太田先生が不在時の太田法律事務所の実質トップだった。こんな時間に来て
いるわけがない。それであたしは大部屋に電話して今日は急用が出来たので一日休暇を取
る旨を事務員に伝えた。

「休暇じゃなくて仕事だって言えばいいのに」

「何でもいいのよ。どうせ有給なんか余りまくっているし」

「そう? 唯ちゃんといっぱい話ができるなら嬉しい。そこに座って。紅茶でいい?」

 あたしは有希ちゃんが腰かけているソフォの正面に置いてあるカウチに腰かけた。お尻
が座面に深々と沈んで居心地が悪い。

「有希ちゃん、あたしに話って何?」

「うん。あたしさ、パパの仕事関係の人で信頼できるのって唯ちゃんだけなの」

 それは喜んでいいことなのか。にわかには判断できない。でも、あたしも奈緒人と奈緒
を喪失した後に、独身の身にも関わらずこれだけ長い間一人の少女の成長を見守ることに
なるとは正直自分でも意意外だった。もちろん、それは定点観測のようではあったけど、
実際に触れ合う頻度としてはすごく少ない。現に有希ちゃんとちゃんと向き合って話すの
は何年ぶりか思い出せないほどだったし。

 それでもあたしは、この実年齢よりだいぶ大人びた少女のことが嫌いではないようだっ
た。

「ありがと」

 あたしはとりあえず当たり障りのない返事を口にした。


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