過去ログ - ビッチ・2
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342:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/01(木) 00:08:18.05 ID:CfJ7xOZ2o

「いいけど。いったい何のために」

「それでさ、あんたの代わりに女の警官を事情聴取させるってできないかな」

「おれの代わりができる女性警官なって署にはいねえよ」

「署にはいなくてもいいじゃん。うちの事務所の女の子を派遣すれば」

「・・・・・・そこまでして何を知りたいんだよ。ドラッグのことか」

「わかってるなら言うなよ。うちの受け付けの二人を教えてやってよ。どこから見ても警
官らしく見えるようにさ」

「俺が事情聴取しろって言われてるんだよ」

「あんたの名前で報告書出しておきなよ。当たり障りのない報告書をさ。それで、それを
出したらすぐに辞職してうちにくればいいじゃん。その間にあんたのために広い社長室と
秘書の女の子を選んでおくから」

「そういうことなら、まあいいけどよ。最低でも今の年収の五倍は保証してもらうぞ」

「意外と欲がないのね」

 そこまで身動きできずに会話を盗み聞きしていたあたしは二重の意味でショックを受け
た。

 一つは会話の中にあたしにとって大切な人の名前が出てきたから。

 もう一つはあたしが太田先生の指示で手がけてた調査によって露わになった横領事件の
ことが話に出てきたから。

 もう、有希に弄ばれて狼狽していた感情は収まって、もっと切実な危機感があたしを襲
っていた。

 結城奈緒人。結城明日香。

 その二人について言及した見知らぬ加山という男の言葉があたしの胸をえぐった。



『中学生の、それも富士峰のお嬢様がねえ。いったいどいつがあんたの男なんだ? 飯山
か。それとも池山なのか』

『まさか、結城奈緒人じゃねえよな』

『まさか図星か。特別大サービスで教えてやろうか。おまえのこと女帝だって警察にちく
ったのは、結城奈緒人だよ。妹の結城明日香の事件がらみでな、兄貴の方が女帝に心当た
りがあるって言って来たってことだ。まさかとは思うけど奈緒人を取り合って明日香を襲
わせたんじゃねえだろうな』



 結城奈緒人。それはあたしが人生を棒に振ってもいいと思いながら、短い間愛情を込め
て育てたあたしの大切な甥っ子だ。兄貴の子どもだからというだけでなく、一時は人生を
かけてもいいとまで思い詰めた奈緒人と奈緒。

 結城明日香は、きっと理恵さんの子どもの明日香ちゃんのことだ。兄貴と理恵さんの再
婚によって苗字があたしと同じ結城に変わったのだろう。何で有希ちゃんは奈緒人を巡っ
て明日香を襲わせるなんてことをしたのだろう。もちろん、有希ちゃんはこの二人には無
縁ではない。太田先生は兄貴と麻紀さんの離婚調停に関わっていたのだから。でも、その
ときの有希はまだ就学前だ。その後の有希に何が起こったのか。

 混乱しながらもあたしは別な考えをも心の中で思い起こすことになった。

 神島スポーツの事件。あたしはあの会社の経理の調査要員として、一時期神島スポーツ
に日参して必死で帳簿を調べていたことがある。まあ、この会社が非常にずさんな経理を
していたことは確かで、こんなものでよく監査法人から監査証明が出ていたものだと呆れ
るほどの乱脈さだった。それを整理することを太田先生から命じられたチームの一員とし
てあたしは必死でこの会社のお金の流れを解析した。回収を焦っている債権者を宥めるた
めにはあまり時間をかけるわけにはいかなかったのだ。

この男の話は嘘ではない。少なくとも途中までは自分のこの目で確認したことだ。あの
日、不審な取り引きを見つけたあたしはその金の動きの全容を解明することができないま
ま、同じチームの公認会計士と共に太田先生に掴んだ事実を報告した。


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