37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/26(火) 00:00:24.88 ID:R3OcIW1Do
麻季は奈緒人と奈緒を試すためだけのために、子どもたちの世話を放棄して彼らを二人
きりで自宅に放置した。精神的に虐待しただけではなく、食事の支度も入浴も何もかも放
棄して六日間の間、自宅を空けて子どもたちだけを取り残したのだ。
「あなたのお父様とか唯さんには子どもたちを放って男と遊び歩いたみたいに言われた。
きっとあなたもそう思ってると思うけど、そんなことをしてたんじゃないの。これは大切
な『実験』だったし、観察もしないでそんなことをするわけないでしょ」
麻季は博人の反応を気にしているかのように彼の様子を覗いながらそう言った。
「・・・・・・児童相談所の人がマンションの管理会社に頼んで鍵を開けて家に入ったときのこ
と聞いてないのか。奈緒人も奈緒も衰弱してリビングの横にじっと横たわっていたんだぞ。
すぐに救急車で病院に連れて行かれたくらいに。何でそのとき君が警察に逮捕されなかっ
たか不思議なくらいだよ」
博人は麻季に対して憤るというより泣きそうな表情だった。そんな彼の様子に麻季の心
が痛んだ。そして奈緒人と奈緒を二人きりで放置している間、麻季の心もずっと鈍い刃で
繰り返し切りつけられているような痛みにさらされていたのだった。
奈緒人はもちろん、奈緒のことだって麻季にとっては大切な我が子だった。それでも麻
季は怜菜の意図を探ってそれが彼女の死後もまだ策動しているようなら、たとえ全てを失
ったとしてもその意図だけは阻止しなければいけなかった。その点ではもう彼女は声の言
うことを疑っていなかったのだ。
その六日間は麻季にとっては肉体的にも精神的にも追い詰められたつらい時間だった。
子どもたちだけを自宅に残していた間、彼女はほとんどの時間をマンションの地下ガレー
ジの車の中でシートに蹲るようにしながら過ごした。一応、自宅近くのビジネスホテルの
部屋を押さえてはいたものの、彼女がその部屋を利用したのはトイレに行くときくらいだ
った。ろくに食事もせずシャワーすら浴びずに彼女はマンション地下のガレージで過ごし
たのだ。
でもそんなことを博人に話す気はなかった。彼の同情を引くつもりはなかったし、たと
えそれを説明したところで博人が麻季に共感してくれるはずもなかったから。
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