391:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/10/18(金) 23:15:27.94 ID:/Uz+bOigo
正直そのときはこのまま明日香を自分のマンションに放置することは気が進まなかった。
とにかく明日香の様子はおかしかったから、いくら約束があるとはいえこのまま明日香を
一人にしていいのかあたしは悩んだ。何でこんなときに限って奈緒人はいないのだ。何度
電話して、昨夜一度だけ電話に出ただけでその後は彼に連絡がつかない。
とはいえ、あたしにとっては自分の仕事を放置できるような状態ではなかった。今は校
了間近で山場なのだ。とはいえ、平井さんという刑事の推理を聞かされた後では、明日香
を一人で放置するわけにはいかない。まして、こんなに落ち込んでいる明日香を見たのも
初めてだったし。あたしは再びいらいらしながら奈緒人に電話した。
・・・・・・やはり彼は電話に出ない。もう決めなければいけない時間だった。
「明日香さあ。あたしは仕事に行くけどさ。あんたはどうする?」
ソファの上に横向きになって横たわっている明日香が顔を上げた。
「ここにいてもいい?」
「いいけど。学校には連絡してあるの?」
返事はなかった。しかたがない。
「いてもいいけど。学校を休むんだったら、あたしが帰ってくるまでは外に出ちゃだめだ
よ。誰か来ても家に入れちゃだめ。博人さんと姉さんと奈緒人以外はね」
「パパとママがここに来るわけないよ」
「あとさ。奈緒人が来ても声だけでロックを開けるんじゃないよ。そこのディスプレーで
顔を確認しなよ」
平井さんの話は明日香に伝えていなかったから、あたしの物言いは明日香にはずいぶん
大袈裟に聞こえたかもしれない。それでも明日香はもう反応すらしなかった。
「じゃあ、あたしは行くよ。適当に冷蔵庫とかあさっていいから、絶対に部屋から出るな
よ」
返事をしない明日香の様子に後ろ髪を引かれながらもあたしは自分のマンションの外に
出た。何だか妙に裸に人前に出たような落ち着かない気分になった。
奈緒人がいてくれたら。あたしはそのとき明日香のことを考えていたのだと思っていた
のだけど、実はそれだけじゃいのかもしれない。安全な自分の部屋から外に出ると急にそ
んな気がしてきた。あたしは多分、寂しいのだ。奈緒人にそばにいて欲しいのかもしれな
い。あたしは自分の車に乗り込んでチョークを引いてキーを回した。車内はさっきまでの
暖かい室内とは異なり冷え切っていた。
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