過去ログ - ビッチ・2
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392:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/10/18(金) 23:16:21.75 ID:/Uz+bOigo

 いつものことだけど、仕事を始めると時間が早い。明日香のことは心配だったけど、仕
事中にはそのことを思い悩んでいるような暇も余裕もない。それに通常の仕事のほかにも
すぐにでも心を決めなければいけないこともあった。平井さんの話を聞いてまず最初に考
えたのは明日香の安全のことだったけど、悩ましいのはそれだけではなかったのだ。

 上司の気まぐれから始めたつまらない企画、女子高生のアロマブームについての記事は
来月号に掲載予定だった。だが、それは余計な副産物まで産んでしまった。酒井さんに丸
投げしてしまう道もあった。もともと女帝とかビッチとかの話は彼が拾ってきたネタなの
だから。でもいくらなんでもそう割り切るには惜しい話だった。何で平井さんがあたしに
そこまで気を許して捜査情報を話してくれたのかはわからないけど、それは聞いてしまっ
た以上簡単に捨て置ける話ではなかったのだ。

 あたしはもともと調査報道を希望していた。この雑誌社に入ったのだってあたしの東洋
音大器楽科卒業の経歴では新聞社からは相手にされなかったからだ。結局中高生相手のフ
ァッション誌に配属されたあたしは、いつかは時事ネタを扱う週刊誌に転勤する希望をま
だ捨ててはいなかった。

 中学生が何十人もの高校生を組織して指定薬物を含むドラッグ販売をすることだけでも、
結構センセーショナルなネタには違いない。でも、平井さんの話はそれに留まらなかった。

 神島スポーツの事件にはそんなに詳しいわけでもなかった。だけどあの頃連日新聞紙上
をにぎあわせていただけだけに、あたしにもそれなりに知識と関心はあった。

 神島スポーツ事件。自殺した営業部長が実行犯であることは間違いなかった。ただ、横
領された金は複雑な経理操作の果てに錯綜した帳簿のどこかに消えたままだったのだ。そ
の解明の糸口がこの事件にあるという。取材源はある。酒井さんさえ納得してくれるなら、
その道は池山とか言う男を紹介してくれたSPIDERのマスターから始まるのだろう。

 午後三時頃になって仕事の目途がたった頃、あたしは意を決して酒井さんに電話した。
別に手柄をあたしが独り占めしなければ、酒井さんも乗ってくれるのではないか。酒井さ
んにとっては週刊時事を裏切ることになるには違いないけど、別に彼はあそこの正社員で
はない。もともとこの取材のきっかけを作ったのはうちの社のバカキャップなのだ。別に
あたしは特別に愛社精神に溢れているわけではないけれど、これほど化けるかもしれない
ネタを他社に黙って譲るわけにはいかないだろう。たとえあたしがしがないファッション
雑誌の下っ端編集だからとしても。

 数コールの後、酒井さんが電話に出た。


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