415:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 00:01:57.82 ID:QOiwJppgo
呆然として女さんの去っていく姿を見守っていた僕は、やがて明日香のことを思い出し
た。もう既に明日香の姿はない。僕は駅の方に走り出した。何でわからないけど明日香を
捕まえないといけないような気がしたのだ。そうしないと、もう明日香との仲は終わりで
はないかという気がして。
改札を通り自宅方面へのホームに駆け上ったとき、ちょうどドアを開けた電車の中に入
っていく明日香の姿が見えた。既に発車のチャイムがホーム上に鳴り響いている。僕はダ
ッシュして電車のドアが閉まる前に何とか車内に滑り込んだ。乗客の視線が僕に集中する。
その中に明日香の姿があった。
「あ」
明日香が驚いたように僕を見て小さく声を出した。僕は明日香と顔を合わせた。彼女と
会うのはずいぶんと久し振りのような気がする。
「玲子叔母さんに怒られたよ」
僕は明日香の隣に座って言った。
「・・・・・・そんな話、叔母さんから聞いていないよ」
やっぱりここ最近の明日香と変らず、僕の目を見ないし顔も見てくれない。
「そうか」
「叔母さん、何だって?」
元気のない声でどうでもいいと言うように明日香が聞いた。
「何でおまえのことを泣かせるんだって」
「・・・・・・何言ってるんだろうね」
「明日香」
「へ」
名前を呼ばれた明日香が初めて僕の方を見た。その期を逃さず僕は明日香を抱き寄せた。
周囲の人目なんか全く気にならない。
「なになに」
「明日香。一つだけ聞かせて」
「何なのよ」
「いいから正直に言って。僕はおまえにプロポーズしたよな」
明日香は僕に肩を抱かれたまま、でも身体を固くして僕からなるべく距離を置くように
しながら目を伏せた。返事はない。
「別におまえの気が変わったのならそれでいいんだ。あのときはOKしてくれたとかいう
気はないし」
「何言ってるの」
「奈緒のこととかさ。おまえがいろいろ悩んでいるのはわかってる。でも、これだけは言
わせて」
「・・・・・・何」
「奈緒が僕の実の妹じゃないって知ったからって、僕の気持は変わらない」
「・・・・・・お兄ちゃん」
少しだけ明日香の体が柔らかくなった気がした。
「奈緒のこととか玲子叔母さんのこととか、おまえにはいっぱい心配させちゃったね」
「あ、あたしは別にそんな」
「ごめん」
本当は今日は明日香に謝るつもりなんかなかったのだ。逆に兄友との関係を問い質そう
と思っていたのだし。
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