過去ログ - ビッチ・2
1- 20
417:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 00:04:20.09 ID:QOiwJppgo

 もう何日も家に帰れないほど多忙な状況で、これほど心臓に悪い電話を取るとは思わな
かった。奈緒人と明日香のことが心配だったけど、仕事が忙しすぎて子どもたちを思いや
ることすらできなかったある冬の午後のことだった。

「編集長。四番に外線です」

「ああ」

 電話口でひどく懐かしい、そして今となっては聞きたくないあの声がした。

「久し振りだね、先輩」

「・・・・・・麻紀か」

「そうよ。まだあたしの声を覚えていてくれたんだ」

「何の用だ。それに先輩って」

「あ、博人さんだった。間違えちゃった。突然電話しちゃってごめんね。もうあたしの声
なんか聞きたくもないでしょうけど」

「奈緒に何かあったのか?」

 それ以外で麻紀が僕に電話してくるなんてありえないので、心配になった僕は心臓が止
まる思いをした。何と言っても奈緒は大切な娘なのだ。

「奈緒は元気だよ・・・・・。でも、あなたは変わってないね」

「何が?」

 この後にどんな話が待っているのかはわからないけど、とおりえず奈緒が無事なことに
僕はほっとしていた。

「こんなに久し振りにお話するのに、博人さんはやっぱり奈緒のことが気になるのね。毎
年奈緒とは会っているのに」

「・・・・・・僕が娘の心配をすることに何か不都合でもあるのか」

 麻紀の返事がない。

「もしもし?」

「それより博人さん覚えていた? 今日は怜奈の亡くなった日だね」

 ものすごく久し振りに浮気されて離婚した元の妻からの電話を受けているだけでもスト
レスなのに。

 怜奈。わずか数回しか会ったことすらない彼女。

 鈴木先輩の奥さんの彼女。

 僕は今では理恵と安定した家庭を築いている。仕事で滅多に会えないにも関わらず、二
人の子どもとの仲もうまくいっている。子どもたちの仲が悪いことだけがこれまでの僕と
理恵の悩みだったけど、それも最近では改善されていると玲子ちゃんからも聞かされてい
た。要は僕は何の悩みもない幸せな家庭を築いて、今さら麻紀からの電話ごときに動揺す
る理由はないのだった。

 それでも怜菜の名前を聞いた僕は動揺してしまったようだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice