422:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/18(水) 00:20:13.13 ID:owlu8LCeo
「あはは」
明日香が僕の胸の中で笑った。
「どうしたの」
「あたしばかだ」
「いきなり何言っているの」
明日香が上目遣いに僕を見た。
「考え過ぎないで直接お兄ちゃんに聞けばよかっただけだったんだ」
「だから意味わかんないって」
「何だかすごく安心しちゃった」
「それならいいけど」
「疑ってごめんなさい。不安になっちゃってごめんなさい」
「いや。はっきりしなかった僕が悪い。ごめんな」
「ううん。もう奈緒ちゃんにも誰にも嫉妬したりしないから。お兄ちゃんのプロポーズの
言葉を一生信じるから」
「うん」
僕は明日香を抱いている手に心持ち力を入れた。明日香の腕もそれに応えてくれた。
これでいいはずだった。これで元通り仲直りできたのだ。
でもどういうわけか明日香に会う前よりもしつこく僕の心の片隅が鋭い刃で触れられて
いる、そんな感覚が僕に取り付いてどんなに目の前の華奢な明日香の身体を抱きしめても、
それは消えない。
それは根源的な不安だった。明日香は奈緒のように男と付き合ったことがない初心な子
ではない。それどころか一時は派手な格好をして外で遊び歩いていたことすらある。そん
なことはとっくに自分の中で克服し、折り合いをつけ、承知のうえで明日香の気持に応え
自ら彼女に告白どころかプロポーズまでした。こんなことは折込み済みだったはずだ。
明日香と兄友の関係を知ったときから何度も考えたことだけど、明日香は僕を裏切った
わけではない。池山のことは裏切ったのかもしれないけれど。当時は僕と明日香との関係
は最悪の時期だった。だから女さんには悪いけれど、少なくともそれだけをもって明日香
の行動を気に病む必要はない。僕は心の中で何度も自分にそう言い聞かせた。
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。