69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/04(月) 00:02:07.91 ID:fb47vGvAo
そのときの僕の夢見がちなうつろな態度に奈緒は少し不満のようだった。
「お兄ちゃん、今誰か他の女の子のことを考えたでしょ」
実際、明日香のことを考えて少しだけ幸せな気分になっていたのは事実だったから、僕
は奈緒の追及に狼狽した。
「あたしと一緒にいるのに、誰のことを考えてたの?」
「そうじゃないよ」
「じゃあ、何考えてたのよ」
奈緒が僕の腕に抱きつきながら不満そうな様子で聞いた。
「別に何でもない。おまえがよくなってよかったなって」
どういうわけか奈緒が少し顔を赤くして照れた様子で答えた。
「おまえって・・・・・・。お兄ちゃん、こないだまで奈緒ちゃんって呼んでたのに」
「馴れ馴れしいかな? 奈緒ちゃんって呼んだ方がいい?」
「やだ」
奈緒はいたずらっぽく笑った。
「何なんだよ」
「お兄ちゃんこそ、話題が逸れてほっとしたでしょ」
「何の話だよ」
「お兄ちゃんが考えていた女の子の話だよ。でもいいよ、おまえでも奈緒でもお兄ちゃん
がそう呼びたいなら」
奈緒が笑って言った。それ以上僕を追及する気はないようだった。
「明日は迎えに来てくれる?」
奈緒が言った。
「あ、土曜日のピアノ教室の日だっけ? うん、いいよ」
「よかった。・・・・・・明日もお昼ごはんに連れて行ってくれる?」
もちろんと言いたいところだけど、今では前とは状況が異なる。奈緒が僕の彼女だった
ときのように振舞っていいのか僕には判断できなかった。それに今は少しでも長く明日香
のそばにいたい。明日香に告白してお互いに恋人同士になってから、明日香に対してこん
な気持になるのは初めてだった。最初は消去法で明日香の告白に答えたことは自分にも否
定できない事実だった。でも今ではそうじゃない。昨晩、明日香を抱いたのは決していい
加減気持ちではなかった。玲子叔母さんのことや奈緒のことも含めて悩んだ末の結論だっ
た。
だから、たとえ奇跡的な再会を果たした妹とはいえ、これ以上曖昧に自分の彼女のこと
を奈緒に隠すわけにはいかないと僕は思った。
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