85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/06(水) 22:57:59.50 ID:/geWKqfJo
「・・・・・・前に玲子叔母さんから聞いた話だと、父さんも母さんも僕と明日香が仲良くする
のを望んでいるみたいなことを言ってたよね」
「うん。あたしもそれ覚えている。つうかあのときは嬉しかったし」
「じゃあ、何であんな言い争いをしてたんだろう。マキっていう人からのメールには何て
書いてあったんだろうな」
「マキさんってお兄ちゃんの本当のお母さんだってば」
「それは聞いたけど」
本当の母親と言われても全く実感がわかない。マキという人から父さんにメールが届い
た自体が問題なのだろうか。でもそれだけではないような気もする。
明日香の不安にも根拠がないとは言えなかった。母さんは僕と明日香の仲のいい様子を
見て喜んでいる様子だったけど、それに対して父さんはそのことにさほど乗り気な様子を
見せていない。
「でもさ。僕と奈緒は兄妹なんだし、普通に考えれば父さんが僕と奈緒が仲良くすること
を応援していたとしてもさ、それが僕と明日香が付き合うことに反対しているっていう意
味にはならないと思うけどな」
「それはそうかも。じゃあ、パパもママもあたしとお兄ちゃんが付き合うこと自体を問題
にしているんじゃないのかな」
「多分ね。玲子叔母さんが言っていたことが正しいなら。むしろ僕と明日香のこととは関
係なく、僕が妹と仲良くするのがいいことなのかどうかで喧嘩してたんじゃないのかな」
「奈緒ちゃんに嫉妬していたあたしが言うのも何だけど・・・・・・。ママはもうあたしたち家
族を放って置いて欲しいんじゃないかな。マキさんにも奈緒ちゃんにも」
再婚家庭なんだから、元の奥さんやその子どもとは関わりたくないという母さんの気持
も理解できるような気はするけど、何となくそれだけじゃないような予感がしていた。父
さんとマキさんが再び仲良くなるのとは話が違う。僕が知っている母さんは、確かに僕の
本当の母親ではないけど、かつて悲劇的に引き離された仲の良い兄妹の再会にまで文句を
言うような人ではないと思う。
「明日、奈緒に聞いてみるよ。奈緒の家庭でなんかあったのかどうか」
「うん。あたしもお兄ちゃんが奈緒ちゃんを迎えに行っている間、叔母さんに話を聞いて
みる。レイナさんという人のことはこれまで聞いたことがなかったし」
レイナって誰なんだろう。母さんがマキさんよりも脅威だとかいうほどの人らしいけど。
「お兄ちゃんさ、奈緒ちゃんを送ったら自宅じゃなくて叔母さんのマンションで待ち合わ
せしよ」
「え」
「えじゃない。あたしと叔母さんはお兄ちゃんの不誠実な浮気くらいで壊れるような仲じ
ゃないし。叔母さんとキスしたことはもう気にしなくていいんだよ」
「不誠実な浮気って。僕はそんなつもりは」
なかったとは言い切れなかった。でも明日香は笑った。
「冗談だって」
明日香と叔母さんの仲よりも、どちらかというと僕と叔母さんが気まずい雰囲気になる
んじゃないかと心配したのだけど、それは明日香には言いづらい。
「それにいつまでも叔母さんとお兄ちゃんと三人で過ごせないなんて嫌じゃん。こういう
ことは早く解決しちゃった方がいいよ。心配しなくていいから。お兄ちゃんが叔母さんの
部屋に来る頃までには、今までどおりの三人の仲に戻しておいてあげるよ」
僕は付き合うようになって初めて、明日香の中に今まで僕が知らなかった面がいっぱい
あることを思い知らされていた。きつい性格で僕を罵っていた明日香が仲直りして泣き虫
で甘えん坊な側面を見せた。でも彼女はそれだけじゃない面を持っているようだ。実の妹
と付き合い出してしまった僕を黙って救おうとしてくれた明日香や、奈緒が実の妹だと知
ってフラッシュバックに悩んでいた僕を黙って根気強く支えてくれた明日香。
そして今では僕をリードして積極的に疑問を解決しようとしている。そんな僕が知らな
かった明日香の姿に僕は密かに萌えていた。
あのまま付き合っていれば奈緒も礼儀正しく優しく、でも積極的な女子だけではない顔
を見せてくれていたのだろうか。僕はさっき初めて見た奈緒の冷たい態度を思い出した。
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