過去ログ - 一方通行「『こころ』かァ...」
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103: ◆OZummJyEIo[sage saga]
2013/05/28(火) 16:44:11.39 ID:kPeY9Zve0
彼の能力を初めて目にしたのは、本格的に彼を追従し始めてから十日ほど経った夜のことでした。いつものように彼のベッドの中に潜り込もうとしていた私でしたが、これまで狸の寝入りをきめていた筈の彼が、身体を起こしてじっと私がやってくるであろう部屋の入り口を見つめているのです。
ですので、入った瞬間、いつもと様子の違う眼をした彼に気づきました。
彼の顔は、明確な意思を持って他人を拒絶する挑戦的なものではありませんでした。ただただ、哀愁の漂う、悲しそうな眼をしていたのです。まるで、保健所に連れて来られた野犬であるかのように。
私が口を開く前に、彼から場所を移そうと提案がありました。彼のベッドが置いてあったのは五人部屋でしたので、他の園児に聞き耳を立てられることが憚られたのでしょう。口止めの為に取ってあったお菓子を起きている園児に渡すと、私を連れだって園の屋上へと向かいました。
勿論、道中の扉は施錠されており、普通なら屋上に行くことなど出来やしません。しかし彼はまるで魔法でも使うかのように針金を操り、易々とこじ開けてしまったのです。どこで身につけたのかは知りませんが、見事な手つきだと子供心に感心したのを覚えています。
そして屋上に辿り着いた私たちでしたが、私が色々と尋ねても彼は中々口を開きません。連れてくるまでは良かったのでしょうが、すんでのところで迷っているようにも見えます。
何か大きな秘密を打ち明けようとしているが、その為の踏ん切りがつかないのだと察した私は、その背中を押してあげることにしました。彼にとっても、私にとってもタブーな質問をもって。
貴方は何故、親に捨てられたのかと。
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