過去ログ - 一方通行「『こころ』かァ...」
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79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/05/21(火) 03:29:03.36 ID:1Ob9G4aE0
訂正


72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]2013/05/19(日) 18:17:52.68 ID:hes8r83x0
実験の全て、ですか。


「あァ、分かってる。だがな、その前に少し俺の話を聞いちゃくれねェか」


「俺の、生い立ちについてな」


...............................................


.........................
私の生い立ちは、まるで冴えない小説の主人公が辿るかのような、画一的で、不幸なものでした。


まず、私には親がいません。白い髪と赤い瞳の胎児を授かった者たちは親であるということを放棄し、退院したその足で私を保護施設の前に棄てていきました。ただ、その施設の管理人、私達は園長先生と呼んでいましたが、彼がすぐさま発見してくれたお陰で大事に至らずに済みましたが。


私の親になり損なった下衆共でしたが、生き残ることが出来た分、あの場所に捨ててくれたことを感謝したいくらいです。


実際、施設での暮らしは快適でした。余りにも幼かった頃の記憶は曖昧ですが、園長先生の暖かい腕の感触といつも可愛がってくれた兄貴分の存在は、決して忘れないでしょう。


私は幸せでした。段々と大きくなるにつれて親がいないことに気付き始めましたが、それでも幸せでした。多分、これから生きていく先、これ以上幸福な時間を過ごすことはないと思います。














ただ、消え去るのは一瞬でした。まるで、線香花火が散るかのように。


端的に、理由だけを言えば、それは借金でした。


これは、執務室の戸棚に身を隠していた時に偶然耳に入ったものですが、施設の経営は基本的に寄付金で賄われ、足りない分だけ借金をするという形で成り立っていたそうです。しかし、以前までは多額の寄付をよせてくれていた団体が、突然様変わりしたかのように寄付金の返還を求めてきたのです。


それが、他の団体にも根回しが行われていたようで、寄付を募っても帰ってくるのは冷ややかな目と怪しい洋装をした下衆共だけとなってしまいました。


一方的に叩きつけられる罵声と、園児達の啜り泣く声、日に日にやつれていく園長先生。あの暖かかった場所は、もう、何処にもありませんでした。


そして......


「......見つけたのは俺だった」


長年園児を見守り続けたであろう執務室で、彼は私達を裏切りました。哀しみが無かったといえば嘘になりますが、それ以上に安堵の気持ちで一杯になりました。


彼は、解放されたのだと。



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