過去ログ - 一方通行「『こころ』かァ...」
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98: ◆OZummJyEIo[saga ]
2013/05/23(木) 05:07:54.76 ID:IAN5tgnA0
彼がやってきたその日、私は同い年の気安さから早速声を掛けました。背格好が近かったという点も、私の背中を後押ししたのかもしれません。
しかし、ファーストコンタクトは失敗に終わります。他人との会話はよく目から始まると言いますが、此方が近寄っても目を伏せたまま微動だにしないのです。彼は虚構に生きて自分を見失っていた訳ではありません。ただ、明確に自分の意思をもって目を合わせないように、合わせないようにとする様子がありありと感じられました。
誰もが羨むような透き通る肌、シルク調に整えられた白い髪、そして、笑顔。園長先生や年長の園児達に褒められて育ってきた私からすれば、彼の態度は予想だにしなかったところです。甘やかされて育った結果とも言いましょうか、自分の思い通りにならないことが許せなかったのです。
次の日も、そのまた翌日も、私はありとあらゆる手段をもって彼への接触を試みました。しかしながら、弱冠6歳の子供が用いることの出来る手段など限られており、交換条件として差し出すお菓子の種類程度にしか存在しておらず、強情な彼の牙城を崩すには些か不十分なものでありました。
ならば、一体どうやって殻に閉じ籠った彼を引っ張り出すのか。当時は、一日中そのことについて考えていたかと思います。
そして閃きました。彼の怒りを利用すれば良いのだと。
私は一日中彼の側を離れませんでした。食事の際は常に真向かいの席に位置どり、部屋の隅で蹲っているときは同じように蹲り、消灯時は彼のベッドの中に潜り込んだりもしました。極端な事を言ってしまえば、お手洗いの時でさえ追随していたかもしれません。
それくらいに、私は彼を追い詰めました。そうすれば、怒りのままに自分から壁を壊してくれると信じていたからです。
ですが、そこにはあるものが立ちはだかりました。そう、彼の持つ奇妙な能力です。
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