過去ログ - 京太郎「もつものと、もたざるもの」
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813: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/08(金) 23:47:26.53 ID:gbLMlhduo
「思ったより対局が長引いてしまってな。待ったか?」

「ちょっとだけですよ。気にしないでください」

「そうか」

そんな会話をしていると店員がビールを持ってくる。
ゆみはそれを手に取り、京太郎に向けた。
京太郎もそれに続く。

「それでは、加治木プロの初タイトル獲得を祝って、乾杯!」

「若干照れくさいが……乾杯」

そう言って、グラスを合わせる。
小気味いい音が響いた後、二人はグラスに口をつけた。
ふぅ、とゆみはグラスから口を離してため息をついた。

「昔はビールなんて飲めたものじゃないと思ってたんだがな」

「少なくとも、最初の一口は大体の人がおいしく感じてくるんですよね」

そう言いながら二人はグラスを置いた。
すると京太郎は満面の笑みを浮かべながら口を開いた。

「でもほんと、おめでとうございます。中継、見てましたよ。最後の逆転手をアガったときは思わず大声出しちゃいました」

「ありがとう。とは言え、そこまでのビックタイトルではないんだがな。規模的には小規模だし、運に助けられた所も多かった」

「いやいや、運とかそういうのもひっくるめて麻雀じゃないですか。あと、小規模だろうと何だろうとタイトルはタイトルです」

そこまで言うと京太郎はグラスに残ったビールを一気に流し込んで言った。
殆ど何も食べていない状況で一気に流し込んだため多少クるものがあったがそれを堪えながら言った。

「俺、ほんとに嬉しかったんですよ。やっと、やっと、加治木さんに確かなものが手に入って」

「……そうだな。トッププロから言わせればタイトルのひとつぐらいで、と思うんだろうが。うん、やはり、嬉しかった。ようやく報われた気がするよ」

ゆみが柔らかく微笑んだ。
嬉しかった、その一言にいろいろな思いがこめられているのを感じて、京太郎は思わず目頭が熱くなった。
それを振り払うように京太郎はにやりと笑う。

「というわけで、加治木プロファンクラブとしてはどうしても祝わずには居られなくてこんな席を設けさせていただきました」

「なんだそれは……。ファンクラブがあるなんて聞いたことがないぞ」

「非公式ですがありますよ? メンバーは俺しか居ませんが」

「一人きりのファンクラブなど聴いたことがないが?」

「じゃあ、大々的に作りましょうか? 俺、会長やります! 声をかければきっと東横さんとかも……」

「やめてくれ」

言葉をさえぎって苦笑するゆみ。それにつられて、京太郎も笑った。



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