911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 09:09:43.19 ID:nQ4y3AGI0
「なあなあ、ビスケットいる?」
「…意外と肝が据わってるよね、千世って。
でもまぁ…貰っとこうかなぁ」
呆れて溜息を洩らす小石川葉瑠(女子五番)に、荻野千世(女子三番)はへらっと笑みを浮かべてビスケットを1枚手渡した。
千世たちがいるのは島の北側のB=06エリア内に位置する港にある駐車場の端に停車している軽トラックの陰だ。
少し離れた場所には商店があり、千世の手にあるビスケットの袋はその商店で頂いた物のうちの1つだ。
味気ないパンだけではとても成長期の胃袋を満足させられず、商店でお菓子類や缶詰などを頂戴してきた。
商店の中に留まっていても良かったのかもしれないが、建物の中では万一誰かに襲われた時に逃げ道が少ないから危険かもしれないと葉瑠が主張したので、誰かが来るかもしれない商店からは少し離れた港へと向かい、今の場所に身を顰めることにしたのだ。
「相葉くんも、どーぞ」
「ん…ああ、ありがとねー荻野ちゃん」
優人が小さく笑ってビスケットを受け取ってくれたので、千世も笑みを返した。
班のメンバーだった宍貝雄大(男子八番)が突如殺害された上に、襲ってきた相手の内の1人が優人の親友である望月卓也(男子十七番)だったことにショックを受けてからというもの、優人はずっと元気がなく沈みきっていた。
普段関わりなどなかったけれど優人がいつも場を盛り上げるタイプの人だということは千世にもわかっていたので、その面影がないことを心配していた(プログラムという状況下でいつも通り元気一杯に振舞われればそれはそれで問題だと思うが)。
しかし、数時間前に親友の日比野迅(男子十五番)に会って話をしてからは少しずつ元気を取り戻していったようで、今のように時折笑みを浮かべるようになった。
そのことに、千世は安堵していた。
第1班のリーダーは千世だ。
普段はのんびりしていて人を引っ張っていくよりも誰かについていくタイプの千世にとって、腕に付けられた王冠の印はプレッシャーでしかない。
普段の学校生活でも、千世はいつも行動を共にしていた鷹城雪美(女子九番)にくっついて行動していた。
雪美は例えば城ヶ崎麗(男子十番)のような強烈なリーダーシップがあるわけではないけれども、さり気なく千世や佐伯華那(女子七番)や室町古都美(女子十八番)を引っ張ってくれていた。
雪美の柔らかなリーダーシップに古都美はぴったりとくっついていたし、千世も自分で物事を決めるのは苦手なので助けてもらっていたし、頭が良いのに千世以上にぼーっとしている印象の華那もきっとそうだろう。
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