過去ログ - 透華「ハギヨシ」ハギヨシ「ここに」 -SS速報VIP

過去ログ - 透華「ハギヨシ」ハギヨシ「ここに」

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37: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:07:07.19 ID:0e1HH48X0

〈絵本と執事とお嬢様〉

38: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:08:28.83 ID:0e1HH48X0

「すう……すう……」

「まったく……これで私よりも早生まれだと言うのだから、世界はまこと、不思議と不条理に満ち溢れていますわ」

以下略

39: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:11:58.63 ID:0e1HH48X0

「無論、拍手喝采褒め奉っております」

「どうだか。その言い草がまず怪しいですわ」

以下略

40: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:13:58.19 ID:0e1HH48X0

ページの端がところどころ擦り切れたこの絵本は、他ならぬ透華が幼少期に好んで読んでいたものだ。
悪い竜にさらわれたお姫様を勇者が救い出すだけの、捻りもなにもないストーリー。
それでも幼少のみぎりから派手好きで目立ちたがりだった透華には、絵本の中の勇者の金ぴかの鎧が、実にまぶしく輝いて見えたものだった。

以下略

41: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:17:46.86 ID:0e1HH48X0

「実を申せば、私が幼心に最も深く感銘を受けたのは、ハッピーエンドの物語ではないのです」

「まあ。そのようなことを口籠っておりましたの？　私の器も狭量に見られたものですわね」

以下略

42: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:19:51.40 ID:0e1HH48X0

透華の記憶を補足するように、執事が要諦を掻い摘む。

『とある山の中に、一人の赤鬼が住んでいた。

以下略

43: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:21:49.21 ID:0e1HH48X0

「そう、そんなお話でしたわね」

「確かに、えも言われぬ読後感は残ります。しかし、それがまた良いのですよ」

以下略

44: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:24:27.73 ID:0e1HH48X0

「そうですね。児童文学に整合性を求めるのも不毛ですが、やや不自然な描写にも感じます」

「赤鬼と青鬼の友情がわかるエピソードなど、挿入されていたらなお良かったと思いますわ」

以下略

45: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:28:52.18 ID:0e1HH48X0

途端に不機嫌になった透華をなだめつつ、執事は語る。

「要は、読み替えを行ってみてはいかがでしょうか……ということなのです」

以下略

46: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:31:58.66 ID:0e1HH48X0

「赤鬼と青鬼は、親子でしたの？」

「まさか。これは一つの読み替えの仕方に過ぎません。家族、恋人、兄弟……どのように読み替えるかは本人の感性次第でございましょう。しかしこういった寓話を、読者が好き勝手読み替えるというのも、時には趣があってよろしいかと」

以下略

47: ◆hruklyol.U[saga]
2013/03/02(土) 01:40:01.04 ID:0e1HH48X0

透華は少しだけ悲しい気持ちになって、言った。
ランプの仄かな光が生み出す陰影が、この時ばかりは恨めしかった。

以下略

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