過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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369:１ ◆B6xkwd67zxGJ[saga]
2013/03/07(木) 03:26:51.60 ID:1aYYZvbqo

　彼は――戦いながら思い出す。
　己の罪の始まりを。
　すべてが始まった、あの日を――。

　辺りが、炎に包まれていた。
　何もかも、一面が――炎に。

　声を殺す赤子。嘆きを上げる老人。
　泣き叫ぶ少年。怒鳴りあげる少女。
　呻き上げる男。啜り泣く女。

　木霊する絶叫。助けを求める声。殺しを願う言葉。

　そこは、地獄だった。

　ある少女が――炎に焼かれそうになっている少女の声が聞こえた。
　自分は、隠れていた。ある店の、机の下に。
　手を伸ばせば……とは言わないが、走れば、自分と同じ場所に隠せただろう。

　だけど、その一歩が踏み出せなかった。
　逡巡しているその間に――少女は炎に飲まれた。

　だが、即死してはおらず。痛みに嘆く声が聞こえる。
　初めは助けを求める絶叫だったのが、だんだんと小さくなっていく。
　最後のあたりは、ただ、少女は死を願っていた。

　――殺して。誰か殺して。

　――殺してください。殺して下さい。

　――痛い。殺して。

　――気持ちよくなってきた。殺して。

　――いたいよ。いたいよ。

　――ころして。ころして。

　耳を閉じて、涙を流して謝った。
　あれが、自分の原体験。あの日、自分はあの場で死んだ。
　何もできずに――殺された。

　助けられるはずの命を見捨ててしまった。
　あと一歩の勇気があれば、あの少女は死なずに済んだ。
　あの少女は痛みに苛まれて、死を臨む事はなかった。

　自分が、そうしたのだ。

　手を伸ばせなかったから。
　手が届かなかったから。
　一歩を踏み出せなかったから。

　だから――彼女は死んだ。

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