過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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459:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/07(木) 12:14:48.76 ID:NMRpKHbs0
人は、自分の命が懸かった状況に追い込まれた時、どうするだろうか。
自分の命が何より大事と、他の全てを犠牲にしても生き残る者がいるだろう。
どうにか状況を打開しようと足掻く者がいるだろう。
ここまでか、と諦める者がいるだろう。

楪静眞（男子十九番）は、３つ目の部類に入る。

静眞はＧ＝０７エリアの診療所にいた。
小さくて古ぼけているが、恐らくこの近隣に住んでいる人にとっては欠かせない施設だったのだろうと推察できる。
隠れ家として絶好の場所だからここにいる、というわけではない。
この場所が、最も落ち着く場所だからだ。

幼い頃から病弱だった静眞は、寒々しい白い部屋や鼻をつく消毒液の臭いには慣れっこになっており、むしろそうでない場所は落ち着かない。
学校で最も好きな場所を聞かれれば迷わず保健室を選ぶ。
名誉なことではないが、入院経験も豊富で、記憶はないが幼い頃には何度か死の縁を彷徨うほどの病気になったこともあるらしい。

そんな静眞の体は痩せこけている。
手の甲には血管の筋が浮いているし、手足は骨と皮しかないのかと思えるほどに細い。
服を脱げばあばら骨が浮いて見えるし、面長な顔は青白い。
細いが温和に見える瞳が弱さを助長しているようにも見える。

そんな見た目は、苛めの絶好の対象だった。
政井威光（男子十六番）や池埜多丞（男子二番）からはよく苛められた。
面白半分で静眞を保健委員に推薦してきたり（しかもクラスメイトたちがそれに悪乗りして、１学期も２学期も保健委員になってしまった）、体育の時にはいつも教師にはわからないように突き飛ばされて保健室に送り込まれた。
浦原舞（女子二番）らには「気持ち悪い」と言われ続け、影では“骸骨”とまで言われていた（舞らの声が大きいので、隠していても聞こえるし、自分のことだということは何となくわかった）。

そんな静眞がプログラムという命懸けの戦いで勝ち残ることは難しい。
体力は人並み以下、しかも現在進行形で体調が悪い。
突然の死の宣告、慣れない環境、友人である植本邦幸（男子三番）をはじめとしたクラスメイトの死を目の当たりにしたこと、全てが静眞の体にダメージを与えた。
熱っぽくて体がだるく、咳も出る。
これでは、とても戦うなんてことはできない。

そもそも、自分に人の命を奪ってまで生きる価値があるのだろうか。
体が弱く、将来社会で活躍できるかも疑問だ。
自分なんかよりも、世の中の役に立つ人間はこのクラスにたくさんいる。
それなのに、そんな人たちの命を奪ってまで、生きたいとも思わない。
常に人に心配され続ける病弱さや、常にからかいや苛めの対象となってきた、楽しさよりも苦しさが先立つ１５年間だった。

診療所のベッドに横たわっている静眞は、寝返りを打った。
目線の先、白く細い自分の手をじっと見つめた。

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