過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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2013/03/07(木) 18:21:39.25 ID:NMRpKHbs0
二度の銃声。
それは微かなものであったけれど、高谷貴瑛（女子１４番）に恐怖を与えるには十分なものだった。
音が遠かろうが近かろうが、誰かがどこかで誰かに発砲したことに変わりない。
それが、自分の親友である畠山和華（女子１７番）の命を奪った音だということは、知る由もないが。
音の種類から察するに、鳳紫乃（女子６番）の発砲ではないだろうということは推察できた、紫乃のそれはタイプライターを連続して押すようなものだったので。

鳳さん…っ

貴瑛の足が止まった。
蘇るのは、自分を襲った紫乃と甲斐駿一（男子３番）の姿。
駿一はともかく、紫乃は人を襲うことに対する抵抗があるとは思えなかった。
いつもと変わらず冷静で、状況判断も見事なものだった。
助けがなければ、貴瑛はあの場で死んでいた。
今こうやっていることも、できなかったはずだ。

「…どうした？」

低い声が聞こえ、貴瑛は顔を上げた。
貴瑛よりも３０ｃｍ近く身長が高いため、見上げなければ顔を確認できない。
目の間の傷跡、短く切り詰めた黒髪、小さいが鋭い瞳――西谷克樹（男子１３番）、貴瑛の命の恩人だ。

「な、なんでもない…」

「休むか？」

貴瑛はぼんやりと克樹を見上げたままだった。
返事を待たず、克樹はその場にどかっと腰を下ろした。
貴瑛が僅かに息を切らしていることを察したのか、返事がないことを肯定と受け取ったのか、或いは克樹自身が休みたかっただけなのかわからない。
ただ、場所としては悪くない。
Ｄ＝０６エリアの、文学部棟と講堂の間の狭い道で、緑化を目指した後なのか、生やした木々が伸びたい放題で放置されているので、周りからは見つけられにくい場所だろう。
貴瑛はその場に腰を下ろした。

克樹は、謎の人だ。
駿一と紫乃から助けてくれたのはとてもありがたかったが、何故一緒に行動しているのかは、正直わからない。
話したことなど、プログラムが始まるまで一度もなかった。
人と行動を共にしないで孤立している克樹は、自己主張を全くしないので、不思議に思う周りの人の想像から発展した噂が多くある。
顔の傷跡は不良との喧嘩で斬りつけられてできたものだとか、喧嘩の腕は山神弘也（男子１７番）を凌ぐとか、暴力団と関係があるとか――どれが真実でどれが嘘なのか、貴瑛にはわからない。
本人とコミュニケーションをとる前にその噂を聞いていたので、ただ何となくとてつもなく恐ろしい人なんだと思っていた。

一緒に行動をしているが、やはり克樹は謎の人だ。
恐ろしい噂が立っている割には、何もしてこない。
もちろん、このプログラムは生き残ることができるのは男女１人ずつなので、貴瑛を殺害したところで克樹の生き残る確率は全く増えない。
一体何を考えているのだろうか。
元々体力が人並み以下である上に、足を負傷しているので足取りの重い、完全に足手まといでしかない貴瑛を置いて行くこともせず、時に気遣って待ってくれる。

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