過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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629:１ ◆B6xkwd67zxGJ[saga]
2013/03/08(金) 02:54:19.08 ID:twgEbfXeo

　大星淡、神代小蒔、新子憧が味わったのはまさに――絶望であった。

　雲霞の如く湧いていた、屑ヤミーの群れ。
　それが今、周囲には存在しない。

　――否、違う。

　周囲ではなく、ある方向に。
　そこだけが、綺麗に開けていたのだ。

カザリ「君たちの戦い方は、もう知ってるからね」

カザリ「……今ので死なないのは、予想外だったけど」

　一撃、ただの一撃で。
　自分たちは殆ど、瀕死に追い込まれた。

　巻き起こった黄色い旋風が――すべてを薙ぎ払う。
　つまらなそうに首を鳴らしたカザリの、一撃。
　それが希望というものを、根こそぎ奪い取った。

小蒔「……ぁ、ぐぅ」

　電王の装甲が軋んだ。肉体が悲鳴を上げる。
　その青いボディの下には、捩じ切られんばかりの突風による裂傷が。
　かろうじて杖を支えに身を起こそうとするも、身体が言う事を聞かない。

　初めて受ける、死の感覚。

　その恐ろしさに体が竦みそうになるものの――だが。
　しかし心を奮い立たせる。
　京太郎に頼まれたのだ、自分一人ではどうにもできないから――と。

　ならば、ここで己が挫けるわけにはいかない。

　彼に、頼まれたのだ。
　改善されこそはすれ、やはり自分で背負い込もうとする少年から。
　頼りがいを覚えこそするものの、無邪気さを感じない少年から。
　笑いながらもしかし、常に張り詰めているような気配を感じる少年から。

　いつも無茶をしている/しようとしている風に見える彼が、いつか年相応に過ごせたらいいと――小蒔はそう思っている。

　だから。

　不謹慎ではあるが、こうして戦闘で自分を頼ってくれた事は嬉しかった。
　どこかで――ああ、彼もちゃんと人に頼れるのだと思った。
　特に、特訓や或いはその他の事で小蒔を頼りこそすれ、戦闘に於いて彼女を自分から頼った事がなかったのだ。

　そんな彼が、ちゃんと、誰かを頼る事が出来た。
　それは素直に嬉しく――自分がその立場に居られるのは何とも、微笑ましかった。

　故に、それであるが故に。

　ここで小蒔は、立たなければならない。
　小蒔が倒れたのならば、彼は無意識にまた人を遠ざけようとするだろう。
　それを許してはならない。そんな悲しい事はあっちゃならない。

　彼はまだ、１５歳の少年なのだ。

　何があったのかは知らないが――。
　どこか虚ろな笑みなど浮かべてはならない、そんな、年下の少年だ。
　少年なら、少年らしく過ごしてほしい。

　オーズの力を持っていても、その力がいかに強力だったとしても。
　だから、強いから――彼が涙を堪えたり、笑いを捨て去ったり、喜びを押し殺したりしてはならない。
　そんなのは、間違っている。

　だから小蒔は――立つ。

　小蒔は彼の事情なんて何も知らないけど――何も知らないから、京太郎が背負う事を見逃す理由などない。

小蒔「ま、だ……まだ、ですよ……！」

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