過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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812:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/08(金) 10:23:20.07 ID:eXxZahjZ0
まだ死にたくない。
まだ１４歳、人生はこれからだ。
じゃあ、真澄のように殺し合いのルールに乗るのか？
でも、いくら協調性の欠片もないクラスとはいえ、約半年間机を並べて共に学校生活を送ってきたクラスメイトたちの命を、そう簡単に奪えるのか。
だけど、真澄のように襲ってきたら――

「…あたしは、乗らない。
　くだらないルールに縛られるなんて、嫌。
　だけど…相手が襲ってくるなら、あたしは容赦しない。
　死にたくないのに、無抵抗でやられるなんてごめんだし」

「僕も…僕は…死にたくない。
　けど、誰かを傷つけるなんて、僕はしたくないなぁ…」

史季は両腕で膝を抱えた。
袖から覗く手が、震えていた。

「…姫サマも見たよね、未来君が…芝崎先生を……」

史季の言葉は、夕姫の記憶の泉に石を投げ入れた。
真澄から逃れることに必死になって忘れていたあの光景が蘇る。
夕姫は席が後ろだったし、橋川新（男子十四番）の背中がブラインドになっていたので、そこまではっきりと見たわけではない。
だけど、道下未来（男子十七番）が芝崎務（担任）を撃ったのは見えた。
黒板に残った芝崎の血の痕も見た。
信じられない光景だった。

史季はそれを夕姫よりも間近で見たのだ。
そのショックは、とても大きかったことだろう。

「龍サンが未来君の名前を呼んだ時、見たの。未来君…別人みたいだった…怖かった…なのにね…あの後、とても、悲しそうだった…だから、思ったんだ。誰かを[ﾋﾟｰｰｰ]と、僕は僕じゃなくなっちゃうんだって。そんなの、嫌だなって。だから僕は、何があっても殺さない」
「…何があっても？」
「うん、そうなの」

驚いた。
いつもぼんやりしていて、人の話もろくに聞いていなさそうで、ふらふらとした印象のある史季が、はっきりと言い切った。
『何があっても殺さない』、と。
クラスメイトが命を奪い合わなくてはならないこの状況で、はっきりと決意を語った史季の姿が、眩しかった。

教室を出ると、植本邦幸（男子三番）が恐らく浦原舞（女子二番）に殺されていた。
真澄が銃で発砲してきた。
滝川哀（担当教官）に言わされた通りの“殺らなきゃ殺られる”状況――その中で殺し合うことを拒否した史季に、心が安らいだ。

「…あたしが“相模”で、アンタが“佐藤”で良かったよ、ホント。史季がいなかったら、次は“サ”…“シ”…紫垣…ヤスじゃん？ヤスだったら、乱闘になってただろうし」

そう言って笑みを浮かべると、史季も細い目を更に細めた。

「僕も、姫サマがいなかったら、きっと真澄ちゃんに…そうだそうだ、助けてくれて、ありがとうね」
「こっちこそ、ナイス忍法…って忍法じゃないけどさ」

２人は改めて顔を見合わせ、笑った。
交友関係の広い夕姫は、史季ともそれなりに会話をしたことはあったけれど、まさかこれほど和ませてくれる人だとは思わなかった。
もしかしたら、問題児クラスと言われた３年２組も、思ったほど酷いクラスではなかったのかもしれない。

史季は膝を抱えた姿勢のまま、ねぇねぇと手をひらひらとさせた。

「姫サマは、じっとしとく？　それとも動く？僕、りーちゃんを探したいんだけど…」
「りーちゃん…莉津子？」

夕姫は、はきはきとした辻莉津子（女子九番）の姿を思い起こした。
のんびり屋の史季とは、正反対のタイプだ。

「うん、このクラスの中で１番付き合いが長い、幼馴染なの。りーちゃんはああ見えて怖がりだから、心配だなぁと思って…」

幼馴染――

夕姫の幼馴染、来栖生馬（男子五番）は元気だろうか。
人が良いから、放っておいたら誰かに利用されたりするかもしれない。
三枝妃（女子六番）や磯田匡子（女子一番）といった親友たちも気になるが、１人にしておくと心配なのは、やはり生馬だ。

「姫サマは、クルちゃん探す？僕もクルちゃんに会いたいや、もちろん、アキちゃんとせっきーにも……真澄ちゃんは……まあ…アレだけど……」

そうだ、生馬は史季と仲が良かった。
のんびりした性格同士、馬が合ったのかもしれない。

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